出版社内容情報
貨幣とは何かという問題からはじめ、ドラッカー、網野善彦、孔子、マイケル・ポラニー、スピノザなどの議論を参照しながら、真の創発を生み出し、人々が本当の意味で豊かに生きられるよう導くものとして、新たな経済学を提唱する。
目次
第1章 貨幣の存在構造とその正しい使い方
第2章 無縁の原理と平和条約としての価格
第3章 価値の源泉としての暗黙の次元
第4章 創発をもたらすマネジメント
第5章 利潤の源泉としての関所資本主義とその崩壊
第6章 コムニス(communis)からの離脱
第7章 『エチカ』の非線形性
終章 生きるための学問―社会生態学へ
著者等紹介
安冨歩[ヤストミアユム]
1963年大阪府生まれ。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。京都大学人文科学研究所助手、ロンドン大学政治政治経済学校(LSE)滞在研究員、名古屋大学情報文化学部助教授、東京大学大学院総合文化研究科・情報学環助教授を経て、東京大学東洋文化研究所准教授、2009年より同教授。博士(経済学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おたま
31
『経済学の船出』という書名が、普通ではない。なんだ?「船出」というのは?ここで安冨歩がやろうとしているのは、単なる「経済学」の話ではない。「経済学」のよって立っている概念、例えば「価値」や「交換」「貨幣」というものの存立を再度根底に帰って考え直し、そこから新しい「経済学」を構想しようとしている。そこで、議論はむしろ哲学的な様相を帯びる。マルクスやドラッカーは分かるが、さらには孔子、ウィーナー、スピノザ、ウィトゲンシュタイン等の思想家、つまり「合理的な神秘主義」の思想家から議論を始めようとしている。2023/01/22
左手爆弾
6
タイトルに「経済学」とあるが、それに惑わされてはいけない。むしろそうした学問領域を分断することの危険性、無意味さを語る本である。真に学問的な思考は大学では育まれない、という著者の主張は非常に重い。内容としては、経済の根本であるコミュニケーションを再考する本であるといえよう。マルクス、ドラッカー、ポランニー、スピノザ、ホイヘンスらがキーマンである。創発と暗黙知の焦点を当て、コムニス、すなわち共有や共通という見方を批判する。おそらく膨大な研究の一部分であると思うので、それぞれのテーマについてもっと知りたい。2012/03/04
青雲空
5
創発‥生命が生きるための力の発揮 2024/11/04
がんちゃん
3
要はコミュニケーションってことなんですね。しかしコミュニケーションの本当の意味を理解していないと一方的な価値観の押し付けとなるだけの、いわゆるハラスメントが起きる可能性が大きくなる。こうなれば人間関係が破綻するだけでなく経済活動も歪んだものになる。その上で、本書で私が一番、驚愕したのは「同期」という物理的現象を知ったことでした。何よりもこの「同期」こそがこれからの政治経済を含めた人間活動をより良いものにするためのキーワードであることを知りました。う~む。人間とは奥深いなぁ。2024/11/11
Ryoichi Toriguchi
3
若干著者の記述の仕方に片寄った印象はあるが、この本の中に提示されている問題というのは、それなりに現在の経済学の問題をついていると思う。ただ、テーマが大きいので仕方ないのかもしれないが、まとめ方が荒削りというか、もう少し丁寧な記述ができるのではないかという気はする。一度読み終わった後に、自分自身の考え方をまとめた上でもう一度読み返してみるのがよいかもしれない。2012/07/16