内容説明
トマス・ゲインズバラの描く少年の衣裳とモデルの謎の、ウィリアム・ブレイクの中世彩飾写本の、リチャード・ダッドの描く奇矯な妖精たちの、J・M・ホイッスラーのヴァーチャル・リアリティの、バーン=ジョーンズの描く哀しきアンチヒロインの、スペンサー・スタナップの「人生の二つの危機」の、オーガスタス・エッグの描く純愛と快楽の旅の、近代都市ロンドンを明るく暗く彩る花売り娘の、イギリス近代の絵画表象の…中へ!
目次
プロローグ 絵画というフィクション
第1章 “ブルー・ボーイ”とは何者か―トマス・ゲインズバラの「ファンシー・ポートレート」
第2章 装飾の喜び―ウィリアム・ブレイクと中世彩飾写本
第3章 リチャード・ダッドの見果てぬ夢―シェイクスピアのファンタジーを追って
第4章 一八五九年のヴァーチャル・リアリティ―ホイッスラー初期のテムズ河風景
第5章 アンチヒロイン偏愛―バーン=ジョーンズ“シドニア・フォン・ボルク”
第6章 スペンサー・スタナップとラファエル前派―「人生の二つの危機」をめぐって
第7章 無垢とエロスの合わせ鏡―オーガスタス・エッグ“旅の道連れ”考
第8章 ロンドンの花売り娘―近代都市の表象となるまで
エピローグ イギリス絵画のワンダーランド
著者等紹介
小野寺玲子[オノデラレイコ]
横浜美術大学美術学部教授/イギリス美術史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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英国の18~19世紀の近代絵画はよく知らなかったので図書館で見かけて手にとった本。この本を読むと、絵には宗教的意味合いや当時の社会事情がふんだんに盛り込まれているので、絵を見たままに鑑賞するだけでは絵の持つ本来の意味が十分に伝わらない、ということは分かったが、でも、多くの素人鑑賞者は百年も二百年も前の時事ネタを知ってまで観賞しようとは思わないだろうから結局、絵は見たままが勝負では?という感想がまず頭に浮かんだが、でも丁寧に解説されると、これまで知り得なかったことが色々分かって、やはり面白かった。2023/03/30