出版社内容情報
ほの暗さの向こうに、美しい世界が見えてくる暗がりに潜む美を写し撮ったのは「気配を撮る名匠」と評される大川裕弘。『陰翳礼讃』の世界がより深く理解できるビジュアルブックです。
内容説明
日本の美学の底には「暗がり」と「翳り」がある。
著者等紹介
谷崎潤一郎[タニザキジュンイチロウ]
1886年東京都日本橋人形町生まれ。1965年神奈川県湯河原にて79歳で没。東京帝国大学国文科中退。小説家、劇作家、随筆家。明治末期から戦後の昭和中期まで、戦時中の一時期を除き、文壇の第一線で活躍。近代日本文学を代美する作家として、内外で非常に高い評価を受けている。豊富な語彙を駆使する端麗な文章と巧みな語り口、作品ごとに変化する題材や文体など、嘆美派、悪魔主義、古典回帰などと評されながら、「文豪」「大谷崎」と称されるにふさわしい業績を残した。1949年に文化勲章受章
大川裕弘[オオカワヤスヒロ]
1944年千葉県松戸市生まれ。1969年写真家高橋克郎氏に師事。1979年大川写真事務所を設立し、以後フリーランスフォトグラファーとして、広告写真および女性誌を中心とした雑誌媒体で活動。日本広告写真家協会(APA)会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
66
友人からのおすすめ本。陰翳礼讃。昔から名前を聞いていたが実際に読んだことはなかった。通読して思ったことは、現代に谷崎潤一郎がタイムスリップしたら、明るすぎて卒倒してしまうのではないかと思った!本書の内容としては日本の美学の根底にあるとされる陰りについて語ったものになる。なにより本書がいいのは、文章にあった写真が載っている点である。ちょっとおしゃれに陰翳礼讃が読める気がした!2024/08/23
肉尊
64
『陰翳礼讃』:レンブラント絵画に通じる陰翳の極み。日本家屋及び室内装飾品は元来、光と闇を巧みに取り入れていった。幼き頃より天井の木目などを心に焼き付けてきた私にとってこの作品は非常に親しみ深い。今でも実家の便所が豆電球であるが、艶めかしさや恐怖を感じる場合がある。かつてのお歯黒は「顔以外の空隙へ悉く闇を詰めてしまおうとして、口腔へまで暗黒を啣(ふく)ませたのではないだろうか」という指摘は流石だ。現代の照明は闇を放逐してしまったのではないか。女性美から万物の美しさにシフトした谷崎作品の転換点ともいえる作品。2021/12/27
TakaUP48
61
日本の建築の中で、一番風流にできているのは厠である/西洋紙の肌は光線を撥ね返すような趣があるが、奉書や唐紙の肌は、柔らかい初雪の面のように、ふっくらと光線を中へ吸い取る/(京都の老舗で燭台に替えて貰い)私が感じたのは、日本の漆器の美しさは、そういうぼんやりした薄明かりの中に置いてこそ、始めてほんとうに発揮される/椀が微かに耳の奥へ沁むようにジイと鳴っている、あの遠い虫の音のようなおとを聴きつつこれから食べる物の味わいに思いをひそめる時、自分が三昧境に惹き入れられるのを覚える/日本料理は瞑想するものだ。2021/11/01
紫羊
61
若い頃、せっせとお能を観ていた何年間かがあった。この作品もその頃に初めて読んだのだった。日本人の美意識について書かれた数多ある作品の中でも金字塔的な一冊であり深く心に残った。さらに今回再読したこの本は、とにかく写真が素晴らしかった。文章と写真の完璧なコラボに、何度もため息が出た。2018/05/07
アキ
58
谷崎潤一郎の文章と大川裕弘の写真がコラボしてこの本自体が美しい芸術作品となっている。何十年も前から温めていた構想のたまもの。谷崎の文章も奥深いが、更に大川氏の光の陰翳が日本古来の美しさを体現している。陰翳のうちに美を見出し、それを日本の建築、厠、和紙、石、羊羹、漆器、日本料理、武将の甲冑、文楽の芝居、女の顔、手、能など、それぞれに写真と文章を見開きで見せている。中でも金屏風や金襖の暗がりの中でぼうっと照り返している美しさが闇の中でこそ映えることを示す写真が妖しげ。これこそが西洋でない東洋の神秘なのだろう。2018/11/04
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