内容説明
南北戦争直後のアメリカ。少年セトは、牧師の父ブレイクとネイティブ・アメリカンの母に育てられ、慎ましやかながら幸せな生活を送っている。ある日、散策に出かけた彼は、とある峡谷でミイラ化した女性の遺体とその脇に置かれた2丁の拳銃を見つける。それはいわくつきのダイヤ“カインの目”とともにブレイクの家族をバラバラにした呪われた拳銃だった。まもなくブレイクは“カインの目”奪取を画策する実の弟ラルトンに惨殺される。父の遺言に従い、セトはバロ・シティのバウンサー(用心棒)のもとに向かう。実はブレイクたちの兄弟だった彼は、セトに“カインの目”と死神の拳銃の来歴を語る―。『エル・トポ』の監督ホドロフスキーが贈るマカロニ・ウエスタンBD!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
25
メビウスとの絵本は見ていましたが、初ホドロフスキーBD長編を読む。絵はフランソワ・ブック。ホドロフスキー(異邦人)の描く西部劇ってことでマカロニウェスタンならぬユーロウェスタンといったところか。兄弟の殺人、カインの宝石、少年セト、この辺は旧約聖書の逸話を醸し出す登場人物設定。少年セトの復讐劇。これってホドロフスキー版「ハムレット」だ。流石BD。まるで映画の絵コンテ。124ページしかありませんが、映画を見ている様で、その内容は濃い。一コマ一コマをじっくりと。ペーパーなのになかなかの興奮。2017/02/22
籠り虚院蝉
1
一気読み必至の西部劇。舞台も登場人物も非常に濃いと思わされるのは決して画風だけのせいではなく、これこそホドロフスキーということなんだろう。荒くれ者どもが闊歩する町インフィエルノ・サルーンで飲み屋の用心棒をしているバウンサーが、彼の兄である親を殺され復讐心に滾る甥を成長させてゆく物語。ところどころに戯曲の台詞の挿入があり、物語を引き締めてくれる。聖書のカインとアベル、セトの兄弟の物語を踏襲していることは間違いないので、悪が蔓延り神も存在しない南北戦争時代における聖書的物語のようにも感じるところがあった。2015/11/24
ノロヒトシ
1
「エル・トポ」のホドロフスキーがマカロニウエスタンの手法でシェイクスピア悲劇をやったような。一代でのし上がった売春婦とそのいかれた息子三兄弟、呪われた銃を操る少年、巨大ダイヤモンドの争奪戦など心踊るエピソード満載。2015/06/20
kaeremakure
1
両親を惨殺された少年の復讐譚と、主人公である隻腕のバウンサーの生い立ち(いかにもホドロフスキー的な狂った家庭環境)を両方やったらページ数が足りなくなった感が強い。ガンマンの修行で「崖際で爪先立ちになって射撃」「野生のクーガーの目の前に座って度胸をつける」なんてのは兎も角、「ペヨーテを食べて意識を開く」ってのははじめて見た。2015/03/14
monado
0
詩的なセリフに彩られたシェイクスピア劇的復讐西部劇。ホドロフスキーの西部劇といえばエル・トポだが、ホドロフスキーの一貫するテーマとしてイニシエーションが通底している。2015/03/17