出版社内容情報
民間非営利セクターの現状とその社会的役割・意義を経済学的観点から論究し、社会的課題に対して望ましいシステムを比較・考察する。江戸時代の商人は「陰徳」を積むという考えから当時すでに相当な水準で社会貢献活動を行っていた。現代の企業によるフィランソロピー(慈善・篤志活動)の先駆的な姿である。また「何を民間が行い、何を国家に任せるか」は、明治維新期に独立という観点から福沢諭吉が提起して以来の古くて新しい重要な問題でもある。このような社会貢献における思想的背景と理論経済学からみた国家や市場の機能と限界を問いながら社会貢献の在り方と本質について考える。NPOや個人によるボランティア、企業フィランソロピーといった民間非営利セクターによる日常におけるさまざまな社会貢献活動や災害時における復興支援などは、価値観の多様化した現代の成熟社会では、ますますその重要性が高まってきているといえる。本書では、社会の仕組みを市場システム(自助)、政治システム(公助)、狭義の社会システム(共助)と捉えて、さまざまな社会的課題に対してどのようなシステムが望ましいかを比較・考察するため、民間非営利セクターの現状ならびにその社会的役割と意義について経済学的観点から論究する。
第?部 総合社会システムと問題の所在
第1章 総合社会システム
1-1 市場システム・政治システム・狭義の社会システム
1-2 システムの適合性を判断する際の基準あるいは留意点
1-3 各システムにおける意思決定主体の行動原理
1-4 各システムにおける意思決定主体に対する評価基準
第2章 市場機構に対する批判と反論
2-1 財の質
2-2 格差
2-3 品格
2-4 倫理観と勤労意欲
第3章 社会貢献の思想的背景
3-1 市場機構の思想的背景
3-2 日本における社会貢献の思想
第?部 利己的行動の下における市場機構の効率性と限界
第4章 市場の仕組みと厚生経済学の基本定理
4-1 経済社会において生産・消費される財の性質と配分の仕組み
4-2 市場の類型
4-3 厚生経済学の基本定理
4-4 余剰の概念を用いた競争市場の規範的分析
第5章 市場の失敗
5-1 市場の失敗の要因
5-2 公共財の存在
5-3 外部性の存在
第6章 市場機構補完の試み
6-1 リンダール・メカニズム
6-2 汚染者負担の原理と当事者間の交渉
6-3 環境税と排出権市場
第?部 利他的行動の基礎理論
第7章 利他的選好と利他的係数
7-1 寄付の経済理論―利他的行動モデル
7-2 利他的選好の類型
7-3 利他係数と所得再分配の効果
7-4 財および動機の代替・補完関係
第8章 純粋分配社会システム
8-1 非戦略的、非協力相互依存関係
8-2 分配均衡の図式的表現
第9章 自発的所得再分配
9-1 社会的相互依存関係の理論
9-2 最適かつ自発的所得分配
9-3 公共財の私的供給
9-4 均衡の存在と一意性
第?部 民間非営利組織と社会的企業
第10章 NPOと利潤制約
10-1 NPOとは
10-2 非営利組織の経済モデル―目的関数が量のみに依存する場合
10-3 非営利組織の経済モデル―目的関数が量および質に依存する場合
第11章 NPOの主体的行動
11-1 NPOの選好
11-2 固有の選好をもつNPOの行動
第12章 社会的企業の基本要件と行動
12-1 社会的企業の安式化
12-2 社会的企業の行動―市場均衡条件が課されている場合
12-3 社会的企業の行動―市場均衡条件が課されていない場合
第?部 営利企業の社会的責任
第13章 企業の社会的責任と社会的責任投資
13-1 企業の社会的責任(CSR)
13-2 社会的責任投資(SRI)
第14章 営利企業の社会貢献活動
14-1 企業フィランソロピーの特質
14-2 「見識ある自己利益」としての営利企業による社会貢献活動
第15章 営利企業、NPOおよび政府と社会的便益
15-1 公共財と供給組織形態
15-2 一定支出のもとでの社会的便益最大化
15-3 独立採算原理の下の純社会的便益
塩澤 修平[シオザワ シュウヘイ]
著・文・その他
内容説明
思想的背景と理論経済学からみた社会貢献の在り方と本質について考える。
目次
第1部 総合社会システムと問題の所在(総合社会システム;市場機構に対する批判と反論 ほか)
第2部 利己的行動の下における市場機構の効率性と限界(市場の仕組みと厚生経済学の基本定理;市場の失敗 ほか)
第3部 利他的行動の基礎理論(利他的選好と利他係数;純粋分配社会システム ほか)
第4部 民間非営利組織と社会的企業(NPOと利潤制約;NPOの主体的行動 ほか)
第5部 営利企業の社会的責任(企業の社会的責任と社会的責任投資;営利企業の社会貢献活動 ほか)
著者等紹介
塩澤修平[シオザワシュウヘイ]
慶應義塾大学経済学部卒。同大学院経済学研究科修士課程修了、米ミネソタ大学にてPh.D.(経済学博士)取得。現在、慶應義塾大学経済学部教授。パリ政治学院客員研究員、慶應義塾大学通信教育部長、慶應義塾大学経済学部長、内閣府国際経済担当参事官、日本NPO学会理事など歴任。専門は理論経済学など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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