内容説明
かつても今も、私たちは「テロルの時代」に生きている。世界が、時代が、多くの変化にもかかわらず、相変わらず同じ問いの前に立たされている。反戦の論理はどの方向に研ぎ澄まされるべきか?私たちは、みずからの置かれてきた歴史的状況をいかに思考しうるか?フランス、アルジェリア、パレスチナ、南アフリカ、スペイン、アラブ世界、そして日本―「遭遇」と考察の軌跡。
目次
序文に代えて ある妄想の未来―いかに「テロ」の影の外に出るか
第1章 テロルの“前”と“後”―二一世紀のフランスとアラブ世界(「テロ」られる側の論理、あるいは主体性の戦争;パレスチナ連帯デモが禁止される国から―フランス『共和国の原住民党』の闘い;一月七日以前―アラブ人の友人たちとの対話から ほか)
第2章 テロルの由来―歴史と思想(歴史的類比と政治的類比のあいだ;存在を賭けた“嘘”との闘い;反ユダヤ主義とシオニズム―アーレント『ユダヤ論集』を読む ほか)
第3章 テロルの主体―国家と民衆(「こんなことはもう二度と」フランス学生運動の苦い勝利;「十二月」を可能にしたもの―フランスの「異邦人」と「SOSジェネレーション」;独裁時代のスペインと現代日本―政治犯の処刑から見えて来るもの ほか)
遭遇と考察の軌跡―あとがきに代えて
著者等紹介
鵜飼哲[ウカイサトシ]
1955年生。一橋大学特任教授。フランス文学・思想専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
3
本書には、パレスチナ問題やシャルリ・エブド事件など、話題は多岐に渡るものの、終始一貫しているのは、帝国主義的な支配構造が戦後世界の根幹にあり、それに対する批判を緩める気は一切ないということ。テロリズムが主権の論理が変奏していくなかで、その主体が遍在し、それが国家に対する「包囲」として機能することで、国家の警察権力が増幅されていく。戦争が社会化され、そのエコノミーが新たなテクノロジーとの兼ね合いのなかで、治安権力と結びつく。この権力を批判していくこと。……そうしたことが語られている。2020/04/18
facies_
0
鵜飼哲による政治論集。テロリズム、イスラーム、死刑制度、1968年など幅広いテーマに対して徹底的にラディカルに思考する。非政治性を装うものの中にこそ最も政治的なものがあるのだという姿勢を崩さないところが素晴らしい。このように社会に関わっていくためにこそ人文学はあるのだと思わされた。2022/09/30