内容説明
破壊的な出来事の底には、証言の主体となることができない多くの存在が沈んでいる。その存在が発する呻きや泣き声、叫び、骨がこすれ合って生じるかすかな音―それらの響きはいまにも消えていこうとしながら、それでもなお空気を震わせている。留め置かれる響きの中で、語ることのできない存在はいまなお生き延びているのではないか。本書では、その響きを出来事の残響と捉えた。
目次
第1部 原爆を書く・被爆を生きる(原爆文学と批評―大田洋子をめぐって;原爆を見る眼―大田洋子「ほたる‐『H市歴訪』のうち」;半人間の射程と限界―大田洋子「半人間」)
第2部 占領下沖縄・声なき声の在処(来るべき連帯に向けて―長堂英吉「黒人街」;沈黙へのまなざし―大城立裕「カクテル・パーティー」;骨のざわめき―嶋津与志「骨」と沖縄の現在)
第3部 到来する記憶・再来する出来事(せめぎ合う語りの場―林京子「祭りの場」;体験を分有する試み―林京子『ギヤマンビードロ』;原発小説を読み直す―井上光晴『西海原子力発電所』)
第4部 いま・ここにある死者たちとともに(亡霊は誰にたたるか―又吉栄喜「ギンネム屋敷」;音の回帰―目取真俊「風音」;循環する水―目取真俊「水滴」)
著者等紹介
村上陽子[ムラカミヨウコ]
1981年、広島県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、成蹊大学アジア太平洋研究センター特別研究員および大学非常勤講師。専攻は沖縄・日本近現代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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