内容説明
本書は、十年にわたって読んだ『ダブリン市民』の考察をまとめたもの。作品の中のことばのイメージ、特に聖書のイメージに焦点を当て、『ダブリン市民』の中に描かれる人々の生き方を追ったものである。
目次
第1章 「姉妹」
第2章 「アラビー」
第3章 「エヴリン」
第4章 「下宿屋」
第5章 「小さな雲」
第6章 「土」
第7章 「痛ましい事件」
第8章 「母親」
第9章 「死者たち」
結び『ダブリン市民』
著者等紹介
辻弘子[ツジヒロコ]
1957ナミュール・ノートルダム修道女会入会。1963上智大学大学院西洋文化研究科修士課程修了。1976‐1977ノートルダム教育大学(リバプール)にてイギリス文学研修。現在、ノートルダム清心女子大学文学部教授
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感想・レビュー
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タイトルと薄さから安易な聖書との照合作業をしているだけなのではないかという危惧があったがそんなことはなかった。本書はまず忠実に原文を読み込むことで見えてくる類稀な精読の痕跡である。ジョイスはその天才的な言語感覚によって最初期から恐ろしく緻密な小説を書いた。『ダブリン市民』の内的構造の対称性、円環構造はその無限性に似つかわしく、聖書のイメージを引用することで永遠に読まれることを希求するかのように。本書の現在におけるジョイスのアクチュアリティを文学にではなく生活に見出してしまう点は、些かナンセンスに見えるか。2014/05/22
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