感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
62
金色の羊毛皮を最愛の人、イアソンに渡すために父を裏切り、弟を殺して駆け落ちしたメディア。しかし、王位に目がくらんだイアソンに裏切られ、「女」、「王女」としての誇りも傷つけられた女は復讐を行う。修辞が美しい分、起こってしまった事実の陰惨さと苛烈さが際立ちます。お腹を痛めて産んだ子供への愛と憎い男の血を引く子供への憎悪で苦しむメディアだが、泥棒猫を殺すために子供に毒を仕込んだ暗殺の道具を持って行かせた。この子供も命の危機に晒すという策を行った時点でメディアは「母」としての資格を永遠に失ってしまったのだ。2015/03/27
松本直哉
31
「聖なる川よ、逆流して源にかえれ、世界の大いなる秩序よ、くつがえれ」王女メディアの憤怒に共感して歌う合唱隊のいう大いなる秩序とは、都合のいいように女性を利用して捨てる男性支配のそれであり、川を逆流させるほどの力でくつがえそうという強い意志の前に、卑怯で臆病な男たちは恐れをなし、彼女の追放を目論む。それでも、ヘカテーとキルケーに教わった魔術をくりだしてついに血なまぐさい逆襲をなしとげるヒロインにとって、自らの腹を痛めて産んだ子どもたちを殺めることなど、もはや何ほどのことでもなかったのかもしれない。2024/04/10
ロバーツ
0
蜷川幸雄のヨーロッパ公演の台本。2022/05/21