内容説明
「恋愛の心理学」としてフランス小説史に不朽の名を残す傑作『アドルフ』。大革命直後、フランスの青年を苛んだ「生存の困難」。自我の魔に取り憑かれた作者コンスタンが、「愛」の問題を核に、どのように「自己客体化」の営為を定着させ、自我獲得を試みたのか。日記及び作品を詳細に検証する。
目次
1 『日記』からフィクションへ
2 『アドルフ』はいつ、そしてどこから?
3 「私」を囲繞する「私」たち
4 無化・否定のしるしの下に―「刊行者の言葉」
5 「逸話」における「愛」の語り
6 「愛の讃歌」から一転して
7 語りの二連板―「逸話」の形姿
8 ふたりの主人公と「社会」の形成する三角関係
9 「父」―書簡―代理父―「逸話」における「父親」
10 三つの声の背後の一つの心―「刊行者への手紙」と「返信」