内容説明
本書は精神医学における歴史的事例を児童期の心的外傷体験という視点から再発掘し、それを現代の事例とも重ねあわせて、その臨床的応用を浮かび上がらせようとしたものである。扱われている歴史的事例は、ギリシア神話のエディプスとエレクトラ、フロイトとジャネの記述した悪魔憑依の事例のハイツマンとアシル、サディズムの原点の著者サド、多重人格のマリー・レイノルズとエステル、フロイトのアンナ・Oとドラ、「私はバラの花園を約束はしなかった」のデボラである。
目次
第1部 神話的人物たちと精神分析的パラダイム
第2部 悪魔払いと憑依状態
第3部 サディズムの再発見
第4部 大ヒステリー、多重人格、そして無意識の発見
第5部 初期の精神分析的事例
第6部 現代の精神分析の事例
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
飛燕
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歴史的な物語や人物の事跡に対し、心的外傷という視点から読み直しを図るという手法を取り、現代の事例と比較して考察している。例えばヒステリー、多重人格、自傷行為などの背景に、近親姦や身体的虐待といった心的外傷を読み取る、という具合。この論法の問題は、ヒステリーはみな児童期の性的虐待被害者になってしまいかねないことだろう。ただし「訳者あとがき」によると、心的外傷の記憶はウソと見なされがちであることに対し、編者らが抗議の意を込めて、心的外傷の事実性を強調しているようなので、その戦略を考慮すべきである。2013/07/18