内容説明
私たちは善意で他者を慈しみ、癒し、育てることができる。同時に私たちは、善意で他者を害し、支配することができる。私たちはその善意と専門性の背後に、加害性や植民地化への欲望をかかえていないだろうか。そこに差別や偏見がないだろうか。正直に述べよう―私自身はそこから逃れられたことがない。その中で私たちはどのように臨床実践に向き合い、何を考えて人と会い、そしてどんなことを考え続ける必要があるのだろうか。本書がそうしたことについて、読者とともに考えるための場所になればと願っている。『The Psychoanalytic Zero』で米国NAAP2020年グラディーヴァ賞(最優秀書籍部門)受賞の著者による最新刊!
目次
対人援助職の「業」と覚悟
第1部 臨床場面のリスクに向き合う(臨床家の加害性;植民地化への欲望と、植民地化への恐れ―臨床家の脆弱性の問題;関係精神分析とフェミニズムの視座 ほか)
第2部 当事者性と間主観性(臨床場面に浮かび上がる他人;臨床場面に浮かびあがる私;臨床場面における当事者 ほか)
第3部 臨床実践と倫理(間主観的な事例の記述;書くことの問題;日本の精神分析 ほか)
エピローグ 対話の作業と、間‐文化的体験
著者等紹介
富樫公一[トガシコウイチ]
NY州精神分析家ライセンス、臨床心理士、NAAP認定精神分析家、博士(文学)。2001‐2006年NPAP精神分析研究所、TRISP自己心理学研究所(NY)留学。2003‐2006年南カリフォルニア大学東アジア研究所客員研究員。2006‐2012年広島国際大学大学院准教授(2007年まで助教授)。専攻は精神分析・臨床心理学。現職:甲南大学文学部教授、TRISP自己心理学研究所ファカルティ・訓練分析家・スーパーヴァイザー、栄橋心理相談室精神分析家。2020年NAAP精神分析学会グラディーヴァ賞(最優秀書籍)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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