内容説明
ウィニコットは、患者が今、どのような発達段階を治療の中で展開していて、何と格闘しているかを理解することに注目する。何よりも大事なのは患者が自分で考え、自分で発見することであり、それを援助するのが治療者の役割である。そのために、治療者は必要に応じてマネージメントしていく一方、ひたすら患者の連想が展開するのを待つ。物知り顔に解釈を行えば、せっかくの発見の機会を患者から奪ってしまうかもしれない。そしてそのようなアプローチが特に役立つのは、言葉では十分にコミュニケートできないプリミティヴなレベルにある患者たちであり、ウィニコットの治療論は、現代の臨床のニードに合うものといえる。
目次
第1部 ウィニコット入門
第1章 ウィニコット理論はどんな理論なのか
第2章 ウィニコットの生涯と人物像
第2部 ウィニコットの主要論文を読む
第3章 「原初の情緒発達」(1945)を読む
第4章 「移行対象と移行現象」(1951/1971)を読む
第5章 「親‐乳幼児関係の理論」(1960)を読む
第6章 「遊ぶこと:理論的考察」(1968)を読む
第7章 「対象の使用と同一化を通して関係すること」(1968)を読む
第3部 ウィニコットの治療論
第8章 子どもの治療──『子どもの治療相談面接』(1971)と『ピグル』(1977)
第9章 成人の治療──依存への退行,ガントリップの治療,解釈をめぐって
第4部 もっとウィニコットを学ぶ
第10章 ウィニコット理論の受容と展開
第11章 ウィニコット関連読書案内
コラム1 対象関係論はどのような理論なのか?
コラム2 英国精神分析協会とウィニコット
コラム3 ウィニコットの受けた教育分析──ストレイチーとリヴィエール
コラム4 ウィニコットの伝記
コラム5 ウィニコットとバリント
コラム6 ウィニコットとミルナー
コラム7 ウィニコットとビオン
コラム8 ウィニコットと現代の乳幼児精神医学──間主観性,情動調律の理論を中心に
コラム9 ウィニコットとアメリカ精神分析
コラム10 ウィニコットと発達障害
コラム11 ウィニコットとボウルビィ
コラム12 ウィニコットとリトル
コラム13 マシュド・カーンの問題
著者等紹介
館直彦[タチナオヒコ]
1953年東京に生まれる。1981年大阪大学医学部卒業。1995年東京慈恵会医科大学講師。2004年天理大学大学院臨床人間学研究科教授。現職、たちメンタルクリニック、個人開業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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