内容説明
G・バシュラールの後継者として、偉大なる科学史家として、フランスのエピステモロジーを牽引したG・カンギレム。M・フーコーらにも多大な影響を与えた主著『正常と病理』を精緻に読み解き、その新たな可能性を開く。
目次
序論
哲学と規範
病に試される生命
社会的諸規範と生命の諸規範の間での主体の創造
科学のある種の観念―誤謬と歴史
結論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bevel
2
そもそも苦しみを述べる個体がいないことには、病が存在しえない。もし客観的な診断記述があるように見えたとしても、それは苦しみを述べる個体の叫びの反響(パトロジーや「意味」)によってでしかない。そして病気は健康とともに、身体の総体における出来事や、詳細を記述し価値を暴きだすための距離を作る営みのうちに吸収される。『科学的精神の形成』に対する応答として序論の問題論とか、ベルナールの糖尿病の例、適応かつ創造としての労働の考え方、社会的規範は科学的規範から独立するけど裏打ちするなど、面白かった。2023/07/01