内容説明
日本近代文学の虚構を“なぞり”ジェンダーという虚構を“切り裂く”。「新しい女」「モダン・ガール」「才女」―次々と生み出される“女”という虚構。この虚構をめぐる幾多の文学的“書きかえ”。文学は“現実”の何に寄与するのか?無名性/有名性を超えて、書く女性たちの逡巡=闘争をあぶり出す。
目次
序章 書くことを拒否しながら書く―田村俊子「女作者」の複雑さ
第1章 “女性”を立ち上げる困難―『青鞜』における小説ジャンルの揺らぎ
第2章 自然主義が消去した欲望―森田草平「煤烟」のマゾヒズム
第3章 大正教養派的“個性”とフェミニズム―田村俊子・鈴木悦の愛の陥穽
第4章 労働とロマンティシズムとモダン・ガール―『若草』の投稿者と林芙美子
第5章 “女性作家”として生き延びる―林芙美子『放浪記』の変節
第6章 盗用がオリジナルを超えるということ―太宰治「女生徒」と川端康成の“少女”幻想
第7章 紫式部は作家ではない―国文学研究の乱世と文芸創作
第8章 戦後世界の見取り図を描く―野上彌生子『迷路』と田辺元の哲学
第9章 “女性作家”という虚構―倉橋由美子『暗い旅』盗作疑惑の周辺
著者等紹介
小平麻衣子[オダイラマイコ]
慶應義塾大学文学部教授。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学(1997年)。博士(文学)。専門は日本近代文学、ジェンダー批評(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mori-ful
1
「林芙美子の時から追ってくると辟易せざるを得ないが、女性の体験(経験)は、好意的に迎えられるが、それは〈初心〉や〈無意識〉である場合に限定され、それを超えることは望まれていない。このような状況に対して、なにがしかの亀裂を入れることは可能だろうか」「〈女性作家〉という虚構」。最後のパートで倉橋由美子『暗い旅』をめぐる江藤淳らとの論争を論じている。当時の批評家がいかに「女性の本質化」に縛られていたかを批判しているのだが、なぜか批判対象の北原武夫の文芸時評が読みたくなった。2023/07/15
よっちん
0
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