内容説明
3・11以後あらためて注目される現代フランスの思想家ジャン=ピエール・デュピュイの人類史的な全体像のエッセンスを描く。現代文明の破綻の認識を前に、知と行為のループをいかに作り直すか。われわれの未来をどう確保するのか?科学と哲学を生存に埋め戻す
目次
序 “破局”に向き合う―J=P・デュピュイ『聖なるものの刻印』から(思想の翻訳について;ジャン=ピエール#デュピュイの仕事 ほか)
1 J=P・デュピュイとカタストロフ論的転回(「さまざまなカタストロフの時代」;リスク論からカタストロフ論へ ほか)
2 デュピュイの科学哲学と破局論―システム論から出発して(序論;結論)
3 救済の反エコノミー
著者等紹介
渡名喜庸哲[トナキヨウテツ]
1980年福島県に生れる。パリ第7大学博士課程修了。現在、慶應義塾大学商学部専任講師
森元庸介[モリモトヨウスケ]
1976年大阪府に生れる。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。パリ西大学博士。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学研究専攻准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Bevel
3
渡名喜氏のは分野横断的なサーベイとして読めるし、中村氏のは、デュピュイの議論の実質的なところを取り出しているように思ったけど魅力はわからなかった。。西谷氏のはツッコミどころしかない。一般性ではない「例」の思考というけど「破局の未来」から逆算される「投企の時間」は破局に関して一般的な主張じゃないか。欲望が暴力、暴力が犠牲、犠牲が共同体を生むってテーゼ、百歩譲ったとしても過剰な一般化以外の仕方で正当化できなくないか。結論として哲学を共同体のための「生殖」と結びつけるってどういうことなの。うーん。。2024/11/19
忘備録
3
カタストロフに関するデュプュイの思想を、日本の哲学者がわかりやすく説明してくれる。カタストロフを理解する上で導入される「投企の時間」という概念:時間は決定木のイメージではなく、円環状であり、未来と過去は相互に決定し合う。たしかに、なりたい自分に向けて日々努力するような状態はこの時間認識が当てはまると感じる。この本ではカタストロフィーがどのような性質を持つのかについて理解できたが、東京直下型地震が来ると言われている今、私は何をすべきかわからないのは、ちゃんと読めていないことの現れなんだろうか?2018/05/11
なさぎ
2
デュピュイの解説本として、非常に分かりやすい。彼の「破局が避けられないからこそ、破局を避けることができる」という一見奇妙な論理はしかしながら有意義なものであり、我々現代人がリスクという概念の下、自らの目を曇らされているという事実を突き付けられる。2018/06/29
なさぎ
1
記憶に全く残ってないのだが、自分は過去にこの本を読んだ事があるらしい。しかも「分かりやすい」とある。——難しかった。特に「投企の時間」については、そも「投企」というハイデガーの術語からしてよく分かっていない。5年前の自分は何を読んでいたのか。無知の知を獲得出来た、という意味では収穫だったかもしれないが。2023/07/28
Mealla0v0
1
J-P.デュピュイの哲学をテーマとするシンポジウムのテクスト集。西谷がはじめに非常にクリアなデュピュイの解説が提示されるため、本編も理解し易い。「知の生態学者」は、様々な「例」=範例を提示し、一般性に回収されないがゆえに重要な破局の意義を示しているというのだ。渡名喜のカタストロフの持つフランス語の響きの検討もおもしろく、カタストロフとリスクの差異や「賢明なカタストロフ論」への回転の指摘も示唆に富む。森本の「救済の反エコノミー」は、タイトル通り、フーコー=アガンベンのテーマとデュピュイの破局論の接合。よい。2017/09/08