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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
97
心筋梗塞の発作にみまわれたフランスの現代思想家であるナンシーは、1991年に心臓移植の手術を受け、それ以来彼は他者の心臓によって生きる哲学者になった。これは、現代の医療技術で生かされる「生」と人間存在のあり方について洞察した哲学論考である。冒頭の〈侵入者〉の1篇は、臓器移植による他者の心臓が引き起す拒絶反応と自分が自分にとっての「よそ者」になる状況について語っている。これに続いて、訳者の西谷による著者への〈インタビュー〉〈ワンダーランドからの声—―「侵入者」の余白に〉〈不死の時代〉の3篇が続く。→2021/08/09
またの名
13
心臓移植を哲学者に行うと本書のような訳分からない考察を始めるので、怖い。ナンシーは自身の闘病体験から、移植される心臓に対する拒絶反応を起こさないため免疫力を人為的に低下させる処置が人間身体の中に実はずっと休眠していた古いウィルスを目覚めさせるプロセスの全体が、あらゆるものをよそ者に仕立てると記述。移植臓器も外部から侵入するよそ者なら、拒絶を起こさないよう操作された身体も異様なよそ者に変わり、自分の中に眠ってたウィルスはやはりよそ者として活発化。よそ者でない存在がない奇妙な身体を個人にも共同体にも見つける。2020/02/29
ぞしま
11
良かった。この哲学者の唱える〈分有〉がどのようなものであるか分かった、などとは到底言えないが、朧気ながら問題意識の一つに触れることでき、ジワジワ刺激的な感慨を覚えた。 連綿と続く存在への思惟に連なる語り口から脳死や臓器移植の問題を目の当たりにしたとき、自分たちの立たされている地平が過去からの地続きであると思う一方、想像しているよりもだいぶ進んだ地点に踏み込んでいるんだな、と思う。そして非常にアクチュアルに哲学(的思惟)が欲されているとも。 おそらく斯かる書物を自分はいま求めているのだろうな、多分。2021/03/21
moco
1
心臓移植手術を受けた著者が自らのその特異な体験について語ってくれています。臓器移植や脳死をどうとらえるべきなのか、どう意味づけるべきなのかあらためて考えさせられる刺激的なテクストだと思います。2010/02/08
gerumanium
0
自らの心臓移植手術から連想した諸々の現代的問題を、思想的に述懐した著作。フランス現代思想の流れを考えれば至極真っ当な著作といえるが、作者自身が手術を受けたという以外に本書だけでは考えるところは少ないような気もする。2010/11/09