感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
88
ホールディングとかフラニーとか、サリンジャー作品でお馴染みの登場人物達がひょこっり、顔を出しています。でもやっぱり、サリンジャー作品の会話はツルツル、滑るものがあって苦戦せざるを得ませんね。個人的には「じき要領を覚えます」が印象的。親が望むこととそれを叶えられるほどの自分の能力は違うという事実を突きつける一文がただただ、悲しい。2017/12/05
KI
21
いくつになっても白線の上を歩くような幼さで。2018/12/25
白義
12
サリンジャー本人が不出来と判断したはずの短編たちが読めるという、不謹慎な楽しみをじっくりと堪能できる。寄る辺のない人々の脆さを壊さぬように寄り添うような、軽やかだが繊細な文体と優しげな眼差し、皮肉に満ちたストーリーはすでに円熟期の作品群を思い起こさせるだけでなく、よりその感傷性がストレートに出ているようで美しい。「じき要領をおぼえます」のような一発アイディアストーリーですら、不器用な青年の生をあからさまではない共感とともに描いていて美しい。ホールデンの兄やその友人が主人公の短編もあってライ麦畑とも関連深い2019/01/13
潮見
8
ホールデン・コールフィードの名前が出たり、本人が登場する短編がいくつか。「最後の休暇の最後の日」や「気ちがいの僕」の主張にひどく共感する。「戦争を真っ只中で経験した俺達…」っていうナルシズムなんだよね、ホントウザいよね。『ライ麦』読み返したい!「若者たち」や「二人で愛し合うならば」がとても若々しくて好き。 / サリンジャー本人の意志により封印された短編小説だと知った上で、それでも僕はこの本を読んでしまった。今後出版されていくであろう未発表作品も、たぶん僕は買っちゃうと思う。ごめんねサリンジャー。2013/11/05
azimuth
7
後年の作品に比べれば物足りなさはあるが「若者」「きょうだい」「芸術と俗世界」の三本柱は変わらず。まあ好きかな程度の作品が殆どだが「ヴァリオーニ兄弟」は二度読んだ。最後の一ページでぐらっとくる。感傷的なのに湿っぽくないのは、「書くこと」ではなく「書かないこと」で演出しているからか。「シーモア―序章―」でも同じ手法が用いられてた。ヴァリオーニ兄弟は困った兄弟関係の類型だけど、これを追求してシーモア―バディが生まれたのかもな。ところで翻訳ではソニーが兄になってたけど本当は明言されてないはず。逆と違うかな。2012/08/05