出版社内容情報
久保田香里[クボタカオリ]
著・文・その他
紫昏たう[シグレタウ]
著・文・その他
内容説明
平安時代、藤原道長が、このように歌ったころ。同じく京の都に、右大臣の藤原実資というひとがいた。その娘は千古といい、人々から「かぐや姫」とよばれていた。十三歳になり、裳着(成人の儀式)が近いので、姫らしくするべきと、外出をとめられて退屈している。そんなある時、「かさねの色目」や「染め」に興味を持った千古は、屋敷の外にこっそり出て行き…。自分で決めたい。そういうものと、あきらめるのではなく。大事に守られ、育ってきた姫君が、「自立」を意識する成長の物語。
著者等紹介
久保田香里[クボタカオリ]
岐阜県生まれ。『青き竜の伝説』(岩崎書店)で第3回ジュニア冒険小説大賞を受賞しデビュー。『氷石』(くもん出版)で第38回児童文芸新人賞受賞。『きつねの橋』(偕成社)で第67回産経児童出版文化賞JR賞受賞
紫昏たう[シグレタウ]
富山県生まれ。イラストレーター。和風の少女をメインに、アナログで制作している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
91
児童書。高学年~。平安貴族のお姫様物語▽藤原道長の時代、小野宮(おののみや)の右大臣とよばれた藤原実資(さねすけ)に一人娘がいた。姫の名前は千古(ちふる)。もうすぐ13歳になる千古は成人の儀式である裳着(もぎ)を控えていて、なんとなくブルーだった。そんな中、千古は染物の魅力に気づき、糸を染める工房をこっそり見に行く。草や木片から思わぬ色が出てくるのに驚き心を震わせた。源氏物語の華やかな場面を、様々な着物で再現し楽しむ▽日本古来の「色」について書かれた物語。古語は難しいけれど、ふりがな付きで親切。良本2023/01/04
さつき
82
平安時代、小野宮の右大臣に掌中の珠のようにいつくしまれた愛娘千古の雅やかで穏やかな日々。大事に育てられ世間知らずなところもあるだけに憧れにも恋にも純粋で真っ直ぐ。自然素材だけで様々な色を写しとる染色の場面はその美しさ不思議さに千古と一緒に心奪われる気分でした。源氏物語の場面を装束で再現する遊びには思わずうっとり。ほろ苦い初恋を乗り越えてずっと幸せでいてほしいと願います。2023/01/24
mocha
72
華やかさを競う女房たちや、和紙の取合せに心を砕いて文を贈る殿方、平安の世は日本の美を育んだ時代だと思う。主人公の千古は裳着も間近の姫君。染色の技を目にしてから、色に興味を持つ。源氏物語に出てくる衣裳を女童達と再現した遊びは、今で言うところのコスプレだろうか。色が溢れて絢爛たる王朝絵巻を見るようだ。窮屈な中にも自分の意志を持つ少女に、現代の子ども達も共感できるだろう。色の事典を傍らに置いて読めば、もっとイメージがふくらみそう。〈NetGalley〉2022/09/07
nico🐬波待ち中
66
ロバート秋山さ…じゃなかった、藤原実資にこんな可愛らしい姫君がおられたなんてびっくり。大河ドラマ『光る君へ』を毎週観ているけれど、いつか千古にも登場してほしい。千古の、この時代の姫君らしくない好奇心や行動力が微笑ましい。ご両親はもとより使用人達からも愛され、伸びやかにすくすくと大切に育てられたことが分かる。各章のタイトルにもなっている"かさねの色目"。ドラマで俳優さん達がお召になっている着物の襲ね方を思い出しながら読んだ。随所で『源氏物語』の一節も出てきて物語になぞらえた襲ねを想像できてとても楽しかった。2024/05/12
真理そら
62
美しい色付きの絵本で読みたい気持ちになった。源氏物語に準えた撫子、女郎花、山吹などの襲(かさね)を乳母子・小鈴と楽しんでいるうちに染めに興味を持つようになった藤原実資の娘・千古。実資は長く子供が出来なかったので一人子の千古には甘いが、12歳になった千古は裳着と婚約を立て続けにしなくてはならないとおもっている。千古の淡い初恋と失恋と成長の物語。2023/05/02