出版社内容情報
滋賀県と岐阜県の境にある山の麓の集落に、一軒だけ残っている養蚕農家。
お蚕さんを育て、その繭から糸を取る。それが生糸になり、真綿にもなります。
人間本来の生活の営みや、生き物の命を衣食住にいただいていることを伝えます。
著者等紹介
大西暢夫[オオニシノブオ]
1968年生まれ。写真家・映画監督の本橋成一氏に師事。1998年からフリーカメラマンとなる。25年間の東京での暮らしから、現在は生まれ育った岐阜県揖斐郡池田町に拠点を移す。ドキュメンタリー映画『水になった村』(2007年)で第16回EARTH VISION地球環境映像祭最優秀賞受賞。写真絵本『おばあちゃんは木になった』(ポプラ社)で第8回日本絵本賞、『ぶたにく』(幻冬舎)で第58回産経児童出版文化賞大賞、第59回小学館児童出版文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
119
お蚕さんから命をいただき、人の手によってぬくもりへと変える。凜とした光沢をまとう生糸。包み込むような温かさにあふれた真綿。そのいずれもが、お蚕さんがはき出す糸から作られる。かつて養蚕・製糸業は、日本の近代化を支える主要産業でもあった。しかし戦後は衰退の一途をたどり、養蚕農家も激減したという。本作は、今も残る養蚕農家や小さな紡績工場で、生糸や真綿が作られてゆく過程をつぶさに写真に収めた写真絵本だ。繭の中の命に感謝し丁寧に仕事をされる人々に対する畏敬の念が、著者の写真と文から溢れるばかりに伝わってくる。2021/03/20
岡部敬史/おかべたかし
119
大変素敵な写真絵本。岐阜県と滋賀県の県境に残る貴重な養蚕農家の作業を美しい写真と、柔らかい文章で伝えてくれます。真摯に取材されているからこそ、被写体の表情も柔らかく、通っているからこそ、季節季節の大事な仕事が納められている。養蚕農家と著者の丁寧な仕事ぶりに心温かくなる。仕事はこうでなくっちゃ2020/07/06
ぶち
111
読友さんのレビューで、日本にも未だ養蚕農家が残っていることを知り、どんな作業をしてらっしゃるのか覗いてみたくなって手に取った写真集です。滋賀県と岐阜県の境にある山の麓の集落に、一軒だけ残っている養蚕農家。お蚕さんを育て、繭を採ります。それが生糸になり、真綿にもなります。生糸や真綿のなんと綺麗なこと!キラキラしています。その輝きは何頭ものお蚕さんの命の輝きであることを、この本の写真と文章が雄弁に語ってくれています。そして、犠牲になったたくさんのお蚕さんへの感謝を込めてお経をあげる"虫供養"に、心が和みます。2020/08/25
seacalf
81
読み友さんの感想に導かれて手に取ったけれど、今さらながらここの皆さんは思わず読みたくなってしまう良い感想を書いてくれること。もう見返しのページから引き込まれる。お蚕さんについては物の本での知識しかなかったので、とても興味津々。温かみを感じる文章と写真で知られざる養蚕の世界を垣間見せてくれる。蔟(まぶし)なんて道具、初めて知ったけれど、独特で面白い。いつか見学させて貰いたいなー。絹はとても美しいが、幾千万の命の上にある。普段は顧みない人間のさがに思いを馳せつつ、温もりを胸に残してくれる良い本だ。2020/07/30
ふう
78
子どもの頃、蚕が桑の葉を食べている様子は目の前で見ていたのですが、その後の工程ははっきりとは知りませんでした。以前あるテレビ番組で繭を熱湯に入れる作業を見て、厳しい仕事だなと思ったことを思い出しました。『糸は生きている。命あるものからできている。』蚕の命と作業をする人の丁寧な技術からそれはそれは美しい糸が生まれます。糸も真綿も大切に使い切らなくてはと思わされます。雲のような真綿の写真は繊細で本当にきれい。消えていってしまう日本の手仕事によせる作者の強い思いが伝わってきます。2021/03/31
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