内容説明
晩秋、小動物が死んだ。大地に横たえた体に、どこからともなくハエがとんできて、ツマグロヨコバイがひなたぼっこを始め、クモが毛にもぐりこみ…。あっ、という間の出来事でした。小動物の形が崩れていく様を、不思議な感動と静かな畏れを抱きながら、観察し続けた日々でした。やがて花に埋めつくされ、跡形もなくなった時、小動物の死は、私の中で思い出に変わったのでした。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナクマ
51
これは良い企画。死骸が喰われ腐れて土に還るまでの記録。定点カメラを仕掛けただけではこうはいかない(それはそれで大好きだが)◉観察→想像→構成→描写の妙技。分解過程と草木虫獣の再生、その2種類の勃発が正しく祭りとして表現される。虫たちのざわめきが自由すぎて好みが別れるだろうけど、今も野山でひっきりなしに繰り広げられている、平凡な、変わりばえのしない、普遍の営み。ラスト、大人になった子イタチがふりかえる詩情。◉飛行機から見下ろす都市も山村も、私にはときどきこの絵本のように見える。→2019/06/06
浅葱@
41
確かに野日記。一つの生が途切れ死を迎える。それは他の生につながる。集まったものたちの生が愉し気なのが目についた。2014/08/15
ゆうゆうpanda
33
<読み聞かせボランティア・対称5年生>読み聞かせでこれはどうなの?と思うのですが2回目のチャレンジです。11月13日テンの母親が死にます。悲しそうな子供の顔でそれが伝わるでしょうか…死体は虫にたかられ外から内から食べられていきます。吹き出しに虫の台詞が沢山で楽しいのですが、どこまで読めばいいのでしょうか。1月23日雪に覆われた骨は狸にバラバラにされ、3月8日骨のあった場所には新しい草が芽吹きます。5月19日野鼠を襲って駆け抜けたのは死んだテンの子供でしょうか。命は巡ります。言葉のない世界です。難しいです⤵2016/02/15
天の川
30
秋の日に、野原で命を落としたイタチの様子が日付を追って描かれる。数日後には、鳥や虫達の食料となっていく。数週間後、毛は小鳥が越冬用に啄ばみ、朽ちていく身体には様々な虫が蠢く。目を背けたくなるページでも、そこに集まる生き物たちの数々の吹き出しのセリフは餌を見つけた喜びで幸せそうだ。イタチは土に還り、春にそこから様々な命が芽吹く。「死」と「命」は隣り合わせ。食物連鎖で世界は成り立っていることを思い知らせてくれる。2014/07/04
たーちゃん
25
一頭のイタチが死を迎えて、その死骸を虫や他の動物たちが食べ命を繋いでいく。なかなか衝撃的な絵に息子は怖がるかな、どう感じるかなと思いながら読みました。息子は「死んじゃったね」とか「ほら、ここにも骨が残っているよ」などと話して、最後は「お母さんが死んじゃって、この子が今度はお母さんになったんじゃない?」と言っていました。そして読み終わってからリビングに入ってきた夫にも説明をしていました。2021/06/24