感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chimako
87
中学校の教員 関口佐紀にかかってきた一本の電話は中学の同級生奈良君からのものだった。お互いに関わりのある久和先生の訃報を聞いた佐紀は一瞬にしてあの痛かった日々を思い出す。拗らせ捻らせ劣等感にグルグル巻きになっている女子中学生だった自分。面倒くさい自意識に翻弄され、自分を卑下し罵り逃げまくりため息をつく。唯一の友だちの良さを分かろうともせず、上から目線で仕方なく一緒にいた日々。失くして気づく自分の愚かさ……中学時代の嫌な子どもだった頃を思い出す。「あんなこと」や「こんなこと」に今でも後悔が立つ。2021/07/01
☆よいこ
76
YA。14歳の夏。弟の[化学と実験の塾]の迎えに行く関口佐紀(せきぐちさき)は、そこで奈良君に会えるのを密かに楽しみにしていた。学校ではひたすら目立たないように身を縮めている佐紀は、明るく楽しそうな人が憎らしくて堪らない。「どうしてわたしはこんなに、地獄に落ちやすいの?」と思う日常の中で、奈良君だけが癒しだった。▽どストレートなYA、ひりひりするような思春期女子の物語は読んでいて痛い。一緒に戦う[同志]が必要だ。▽若いなー2020/08/15
モモ
67
思うようにいかない中学時代。地味な存在の佐紀は、髪を切ればクラスで目立つ子の真似をしたと凄まれ、苦しむ毎日。奈良くんは両親の不仲に苦しむ。そんな二人に塾の久和先生は、今の苦しみは今だけ。苦しみを取り込むと人の苦しみを分かってあげられると諭す。佐紀はこつこつと自分自身の改革を進め、違う風景を見ようと努力していく。不満だけでなく、一歩一歩苦しみながらも進んでいく佐紀を応援したくなる。中学生にも大人にも、おすすめの一冊。とても良かった。 2020/09/03
ぶんこ
62
劣等感の塊りだった頃の中学時代を思い出しました。いつもネガティブに考えては僻んだり妬んだり落ち込んでしまう佐紀。読んでいるだけでつらかったです。佐紀には峯田さんという素晴らしい友がいて、彼女の一言の重みが、少しは佐紀さんの気の持ちように好影響を与えたと信じたい。学校で疎外感を感じていた佐紀にとっての帝国であった塾と同志たち。久和先生と百瀬さん、奈良君を同志と言えるようになっていた佐紀さんが素敵。いい大人になっていました。2021/06/30
あおでん@やさどく管理人
55
中学生という時期は、これまでのような「純粋なもの」だけでなく、「大人の事情」であったり他人の全く違った一面を知ってしまったりする時期でもある。それは初めての経験だから、うまく立ち回れなくて苦しんだり後悔したりすることもある。周囲の人たちがとやかく言うこともあるかもしれないが、結局はそういった経験を自分の中で消化し、行動していくしかない。帝国の同志と一緒に戦ったあの夏に、佐紀はそれを学ぶことができてよかったと思う。2020/09/08
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