内容説明
いいか、ジャック。ここで起こることは、すべてゲームだと思え。どんな目にあっても、くよくよしてはいけない。うまくゲームをするんだ。そうすれば、ナチより長く生きることができるかもしれない。極限状態のなかで、ジャック少年が見たものとは…。
目次
戦争のうわさ―一九三九年
占領
つのる恐怖
絶望
死ぬ権利
ルールの学習
ゲーム
収容所の日々
死の扉
モーニク
飢えとの戦い
戦争は終わった
家族をさがし求めて
新しい人生
著者等紹介
ウォーレン,アンドレア[ウォーレン,アンドレア][Warren,Andrea]
アメリカの女性ノンフィクション作家。雑誌編集者、新聞記者などを経て、現在は若い人たちに向けて、歴史をテーマとした良質なノンフィクション作品の執筆を続けている。主な著書としては、『孤児の列車―ある少年の真実の物語』(ボストン・グローブ賞)などがある
林田康一[ハヤシダコウイチ]
1952年、東京に生まれる。東京大学文学部英米文学科卒業。出版社勤務の後、企画・翻訳に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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活字の旅遊人
37
ポーランドに住んでいた少年が経験したホロコースト。少年が生き延びるためにとった行動を、取材を元に描いていく。著者自身が経験し、自ら精神分析をしたようなヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』の迫力はさすがにない。が、少年の視点、気持ちをよく捉えていると感じた。その後のアメリカでの暮らしにも触れているが、今日のアメリカとユダヤとの関係を考える上でも参考になる。小学校高学年くらいから読めそうだが、さて、どうかな?2021/05/19
Cinejazz
13
第二次大戦後にアメリカ市民となったユダヤ人の証言をもとに、ホロコ-ストの歴史的事実をヤングアダルト向けに語られた衝撃の書。著者(児童文学作家)曰く〝生還者の話を聞くことは、とても辛いことです。しかし、それを語る彼らの方はもっと辛いのです。語ることによって、自分たちが味わった悪夢のような、野蛮で非人間的な体験を、もう一度味わわなければならないからです。しかし、彼らには判っているのです。警鐘を鳴らさなくなくてはならないと云うことが〟怒りと憎しみは精神を蝕み、生きる気力を失わせます。発想の源は常にボジティブに!2020/12/31
りー
10
坂口尚さんの「石の花」を思い出しながら読みました。主人公は16歳の少年ジャック。バルト海沿岸の都市で育ったポーランド系ユダヤ人。疎開先にもナチス軍が侵攻し、そこで家族と引き離され、強制労働収用所に送られます。“いいか、ジャック、ここで起こることは全てゲームだと思え。”“だが、そのゲームでは、たった一つのミスが死を意味する。”主人公が、自分はポーランド人だと思っていたのに実はポーランド人からはユダヤ人だと思われていたのだ、と痛感する場面が印象的。ナチスと同盟していた日本も繰り返し見つめ直さねばならない事実。2019/06/29
にしの
7
児童文学作品。家族から一人引き離された強制収容所に収監されたジャック少年の物語。彼は実在の人物であり、聴き取りを元にした物語はルポルタージュのように迫ってくる。これまで強制収容所の囚人の書き物は『夜と霧』や『アウシュビッツ潜入記』を読んだが、いずれも心理学者と軍人という大人の物語だった。ジャック少年は13歳で収容された子どもであったが、強制収容所では働けない人間は殺されるので、彼は子どもでいることは出来なかった。強制収容所を生き残った人の話はどれも生きる意思と工夫、仲間との連帯の面で似ているように思う。2021/03/08
逸巳
5
目を背けたくなりような事実です。ですが、主人公はどんな境遇でも希望を失うことなく生き抜く方法を模索します。 今も大小様々残る差別に、私はどうやって向き合うべきであろうか。 2017/10/19