出版社内容情報
文字を読める黒人ピンクスと文字を読めない白人シェルダン。南北戦争を舞台に、二人の少年の友情、そして別れを描いた実話。 小学校中学年~中学生
内容説明
ピンクとセイは、とちらも奴隷制廃止を支持するリンカーン大統領率いる北軍の兵士ですが、戦争に参加した動機にはずいぶんちがいがあるようです。この戦争の意義について深く考えたことはなかったように見えるセイにとっては、ワクワクする冒険にでも参加するつもりだったのかもしれません。一方、ピンクにとってこの戦争は、まさに自分のための戦争です。奴隷制を擁護する南部のジョージア州で奴隷の子として育ったピンクが、なぜ北軍の兵士として戦っているのか不思議に思われる方もいるかもしれません。実は北軍には南部からの逃亡奴隷を中心とした黒人部隊が組織され、戦争終結までには18万人もの黒人が参加しています。ピンクもそのうちのひとりなのです。この絵本は、そんなふたりの少年の出会いと友情、そして別れを描いた本当にあった物語なのです。
著者等紹介
ポラッコ,パトリシア[ポラッコ,パトリシア][Polacco,Patricia]
1944年、ミシガン州ランシング生まれ。カリフォルニア美術工芸大学などで学ぶ。自らの家族の歴史を題材とした作品を数多く手がける絵本作家。ミシガン州ユニオンシティー在住
千葉茂樹[チバシゲキ]
1959年、北海道生まれ。国際基督教大学卒業。編集者として出版社に勤務の後、翻訳に従事。北海道当別町在住
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ann
61
南北戦争あたりから20世紀前半あたりまでのアメリカ史に興味を持ち、いろいろな文献を読んで来たが、実話を絵で読ませるやり方は初めてだった。凄い。人間の根幹なんてたったひとつのことなんだ。ピンクスの手足の裏が薄いピンク色で、本当に細部までいろいろな意味を込めて描かれている。100年後にルーサー・キングが出現するのは必然だったと、改めて考えている。2018/04/29
ぶんこ
54
アメリカの南北戦争の時、字の読めない白人少年セイは黒人少年ピンキーに助けられる。同じ北軍の少年兵士といっても所属は違い、黒人部隊には銃も無かったという事に驚く。同じ奴隷解放という主義を持っていても、黒人部隊は捨て駒扱いであり、南軍に捕虜となっても、黒人のピンキーは即処刑。人種差別の深さに絶句しました。それだけに生き残ったセイが、ピンキーの事を子々孫々にまで語り繋ぎ、忘れないでほしいと思った心にうたれました。2017/06/25
ルピナスさん
51
【絵本】米国と言うと、常に外国に目を向け戦争してきた印象でしたが、本書は、米国内での奴隷解放を巡った南北戦争を描いています。北軍の白人の少年兵だった主人公は、同じく北軍の黒人の少年兵とその母親との出会いのおかげで命を救われ、戦時の大切な友人の思い出を孫の代まで語り継いで行きますが、その思い出は決して幸せ一本なものではありません。私も祖父から戦争体験を聞いていますが、語り継ぐということは、存在は消えても大切な誰かを人々の心の中で生かすためにとても大切な行為であると思います。絵本やあらゆる記録も然りですね。2021/09/08
たまきら
38
名前を口に出し続けることの大切さを感じずにはいられません。語りついだ人がいるからこそ、私たちは知ることができる。そして、戦争の愚かさに気づくことができる。最後の「この名前を覚えておいてください」というメッセージが、そのまま全ての名もなき戦没者につながります。この作家さんの本、本当にはずれがないなあ…。2024/12/14
GAKU
34
読友さんお薦めの児童書。作者の家に語り継がれていた実話だそうです。文字を読める黒人ピンクスと文字を読めない白人シェルダン。南北戦争を舞台に、二人の少年の友情、そして別れが描かれています。北軍には南部からの逃亡奴隷を中心とした黒人部隊が組織され、戦争終結までには18万人もの黒人が参加していたという事実初めて知りました。最後は悲しい結末です。2015/12/05