内容説明
「よき書物」と出会う―恩師・井上洋治、遠藤周作、須賀敦子、神谷美恵子、池田晶子、柳宗悦…著者自身の「危機」を救ってきた言葉を紹介し、「確かに生きる」ヒントを探る。知識ではなく、人生の手応えを与えてくれる「生涯の一冊」に出会うための方法も記す、読書をめぐるエッセイ集。
目次
感情の言葉
情愛の泉
余白の言葉
悲愛の人
遅れて届いた手紙
沈黙のちから
聖なる場所
コトバを運ぶ人
霧の人
弱き勇者たちの軌跡
いのちを生きる
真理のありか
たましいの糧
読めない本と時の神
無常の奥に潜むもの
読書の効用
良知のひかり
十読は一写に如かず
内なる世界への道標
たましいの反抗
たましいのちから
色読という次元
苦しみの彼方
未完の代表作
著者等紹介
若松英輔[ワカマツエイスケ]
1968年新潟県生まれ。批評家、随筆家、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。2007年「越知保夫とその時代 求道の文学」にて第14回三田文学新人賞評論部門当選、2016年『叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』(慶應義塾大学出版会)にて第2回西脇順三郎学術賞受賞、2018年『詩集 見えない涙』(亜紀書房)にて第33回詩歌文学館賞詩部門受賞、『小林秀雄 美しい花』(文藝春秋)にて第16回角川財団学芸賞、第16回蓮如賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
104
若松さんが読んでご自分が感じたことなどをその本の文章を引用しながら述べてくれます。じっくり読ませてくれるような文章で心に響くような感じです。分野としては古典などが多いので好みは分かれるかもしれませんが私のフィーリングには合っていました。再度読んでみようという本が増えました。「私の古典」というあとがきがまたいい感じです。2021/06/25
trazom
84
最近、若松さんを読むのに少し疲れてきたけれど、でも、新刊が出ると手にしてしまう。若松さんが評伝を書きたくなる人たちの内的光景を、二語で表現しているのが面白い。井筒俊彦は叡知・コトバ、柳宗悦は不二・即如、小林秀雄は美・悲しみ、吉満義彦は神秘・天使、河合隼雄は「たましい」・均衡、池田晶子は内語・不滅、須賀敦子は霧・聖人だとか。愛が、他者の苦しみや悲しみに共振して生まれるものだと知っているこういう人たちを、「美し」や「愛し」に「かなし」とフリガナを打つ若松さんが読み解いてゆくという、味わい深いエッセイ集である。2021/02/02
たまきら
42
読み友さんの感想を読んで。一言一言が丁寧に吟味されていて、静かに降り積もる雪の結晶を覗き込むかのような印象を受けた。クリスマスイブの日に読むのにふさわしい、キリストへの敬愛を感じる一冊。きらびやかなバチカンの人々より、一般に身を置きながらキリストの生と自分自身の生きざまを考える人々を貴く感じる。スポットライトを読み、映画を見たせいもあるのかもしれないけれど。2021/12/24
モリー
39
探求心から探究心へ。若い頃は幅広い分野の本を読み、好奇心を満たし、知識や考えるヒントを求める読書スタイルも良いかもしれません。しかし、体力も気力も減退し、生きる時間も労働によって削られる身には、物理的にもそうはいきません。それに、自分が究めたいと思う何かが見えてきたならば、読む本を吟味し、著書と深く対話しながら読む読書スタイルへと転換すべきかもしれません。そんなことを考えさせられました。また、今後は『「読む」を鍛錬するのは「書く」で、「書く」を鍛えるのは「読む」なのである』を心掛けていかねばと思いました。2021/12/17
あきあかね
25
「言葉に飢える、という表現がある。たしかに言葉は心を潤す。危機にあるとき人は、些細な一言によって、消えそうだったいのちの炎をよみがえらせることさえある。」 一般的なブックガイド、読書案内かと思って手に取ったが、言葉を巡る切なる想いが随所に現れ、読むという行為の本質、暗闇の中の一条の光ともなる言葉の持つ力、ひいては生きることそのものを問うような本だった。 「私たちに必要なのは、ありもしない「答え」めいたものではなく、たしかな人生の「手応え」なのではないか。」「叡智は、利己を含む土には根付かない。⇒2022/01/15