内容説明
災害時になぜ人々は無償の行為を行うのか?そのとき、なぜエリートはパニックを起こし、人々は自発的な秩序をつくり上げるのか?1906年のカリフォルニア大地震から、ニューオーリンズの巨大ハリケーン、9.11テロまで、危機の最中に現れる人々の自発的な相互扶助のメカニズムを追った、珠玉のノンフィクション。旧版での抄録部分、原注などを完全収録した決定版。
目次
プロローグ 地獄へようこそ
第1章 ミレニアムの友情:サンフランシスコ地震
第2章 ハリファックスからハリウッドへ:大論争
第3章 カーニバルと革命:メキシコシティ大地震
第4章 変貌した都市:悲嘆と栄光のニューヨーク
第5章 ニューオーリンズ:コモングラウンドと殺人者
エピローグ 廃墟の中の入り口
著者等紹介
ソルニット,レベッカ[ソルニット,レベッカ] [Solnit,Rebecca]
1961年生まれ。作家・歴史家・アクティヴィスト。カリフォルニア州に育ち、環境問題や人権、反戦などの政治運動に参加。1988年より文筆活動を始め、『River of Shadows:Eadweard Muybridge and the Technological Wild West』で全米批評家協会賞、マーク・リントン歴史賞を受賞
高月園子[タカツキソノコ]
翻訳者・エッセイスト。東京女子大学文理学部卒業。英国在住歴25年(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
106
経済的格差や政治的対立の圧力下にある現代人は、全てを吹き飛ばす巨大な災害で一切から解放される。金持ちも貧乏人も、警察官も囚人も、ユダヤ教徒とムスリムも平等に何もかも失って、誰かを羨んだり憎んだり差別する前に協力しなければ生きられないからだ。自然災害や人災を問わず、あまりに悲惨な事態に見舞われた一瞬の世界だからこそ自発的に助け合うユートピアが生まれた。しかし自分たちが統制する社会を理想とする政治家や軍人のエリート層は、一般大衆が無秩序に動くのではとパニックになり締め付けを図る。本物の災害は人がもたらすのだ。2023/04/26
かふ
25
自然災害で起きるユートピアがあるという。人災で起きるディストピアがある。戦争はまさにそうしたディストピアの現れだ。この二つを比べてみると災害で起きるユートピアは、市民による炊き出し、助け合い。それは自治体というよりは主婦層から始まるように思える。おばさんたちの力。それに対するのは自治会や政府のおじさんたちの力による支配がある。まさに戦争はそうした力なのかもしれない。戦争ディストピアという言葉を思い浮かべた。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n9d1798033ce22022/03/12
イボンヌ
7
タイトルについての事例を沢山引用して考察されています。有名なハリウッド映画のパニック映画なども、用例として取り上げらています。災害の専門家ではなく、作家のようです。2025/05/03
faqa
2
被災社会の具体事例を多数紹介。概ね互助に努め上手く機能するものの被災者自身による地味な活躍はメディアには取り上げられず、火事場泥棒の存在や警官等の権威者の活躍ばかりが伝えられる。災害時の社会がどんな形になるかは人・コミュニティ・状況に左右される。ポジティブな災害経験は自由に協力し合えて妨げるもの無く社会的適応ができる場合に限られる、と。著者が左派ゆえのオバマへの過度の期待さえなければ後味良かった。オバマケア等の左派らしい政策もしたけど経済グローバルを辞めず経済格差は拡大し続け結局貧困者も増え続けた。2025/02/05
コーキ
2
著者は「災害ユートピア」という現象について、具体例を列記していく。貨幣がない、短期的な視点、、、。警察等の権威に対する強烈な反感があるため、その活動を全否定してしまう傾向がある。自発的なコミュニティに魅力を感じるのは同感だが、それに過度な期待をかけすぎているきらいもある。災害は多数の死傷者を生むため、それをユートピアへの契機とすることに違和感もある。2024/01/01