内容説明
ニューヨークの地下鉄、パリの地下納骨堂、アボリジニの聖地、カッパドキアの地下都市、マヤ人洞窟など、世界中の「光なき世界」を渉猟し人類の歴史と闇への畏怖に思いを馳せた比類なきノンフィクション。
目次
第1章 地下へ―隠されたニューヨーク
第2章 横断―パリの地下納骨堂
第3章 地球深部の微生物―NASAの野望
第4章 赤黄土を掘る鉱夫たち―アボリジニの聖域
第5章 穴を掘る人々―もぐら男とカッパドキア
第6章 迷う―方向感覚の喪失が生む力
第7章 ピレネー山脈の野牛像―旧石器時代のルネサンス
第8章 暗闇―「創世記」の闇と意識変容
第9章 儀式―雨を求め地下に下りたマヤ人
著者等紹介
ハント,ウィル[ハント,ウィル] [Hunt,Will]
アメリカ出身。雑誌社の記者を経てノンフィクション作家に。ニューヨーク大学パブリックナレッジ研究所客員研究員。トーマス・J・ワトソン財団、ニューヨーク芸術財団、ブレッド・ローフ作家協議会、マクダウェル・コロニーから奨学金および補助金を授与される。『地下世界をめぐる冒険―闇に隠された人類史』が初の著書
棚橋志行[タナハシシコウ]
1960年三重県生まれ。東京外国語大学英米語学科卒。出版社勤務を経て英米語翻訳家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
90
NY/パリで垣間見る芸術性と、ピレネー山脈やメキシコで今なお遺される精神性との対照が印象的。どちらもヒトの心底に宿るルーツが滲む感。加えて興味深いのが、折に触れて補足される”歴史”。地下納骨堂や地底人議論など、NASAをも巻き込んだ神秘性は、現代にも続く。但し、閉所・暗所が苦手な私には考えられない冒険。何故だか思わず頭に浮かんだのが、映画『The Great Escape』のBronson氏。因みに、神秘性という意味では、REVSが口にした「使命」も意味深。ましてや地下鉄の壁の裏側にも作品?!深い世界だ。2021/01/03
こばまり
57
なんともロマンチックなエッセイだ。臨場感ある現場のレポートもさることながら、内省の描写が素晴らしい。博学、そして匿名性を帯びた筆名も魅力的。ちなみに私が閉所恐怖症を自覚したのは2005年のホラー映画『ディセント』である。2020/12/14
ヘラジカ
55
世界各地の地下をめぐるルポルタージュを期待して軽い気持ちで手に取ったが、想像を超えて単なる冒険記録に止まらない文化人類学的な奥深さも有していた。天然・人工を問わず目に触れられない隠された領域を探索することが、人類の精神や文物の深奥(心奥)を探究することに繋がる面白さ。神話や儀式、掘削衝動から「迷う」ことについての哲学的な論考など、題名からは予想もつかないほど広範な分野に触れられていて大変刺激的である。私自身が地下世界には並ならぬ好奇心と恐怖心を持っているので終始魅了される読書だった。2020/09/06
そふぃあ
28
ニューヨークの地下やパリのカタコンベ、マヤ文明の洞窟など各地の「地下」を巡礼し、ありったけの知見と視点を総動員して地下世界を考察する。 瞑想状態と脳の空間認知能力の鈍化には関連性があること、暗闇による感覚の遮断は自己喪失→トランス状態に繋がることを示す研究の提示によって、人類が古くから行なっていた放浪・迷宮・暗闇を用いた儀式の効用が証明されていくのがスリリングだった。人間は暗闇や迷宮から「何か」を持ち帰ってくるのだ。ダヴィンチがトスカーナの洞窟でクジラの化石を発見し、啓示を得るエピソードが印象的だった。2021/06/20
羊山羊
18
地下に魅せられた著者が、都市の地下から自然の地下までもを、抜群の行動力で漁り尽くす1冊。面白さ以上に、人類がいかに地下に色んなものを隠し、捨ててきたかということをしみじみ実感できる1冊になっている。ゴミ、下水、土、死体、果ては人間性までもを捨て続けてきた。読むと、天空の城ラピュタの腐海を思い出す。現実世界に浄化作用はないけども。 本著のカタコンベの章は特にお気に入り。2022/10/10