内容説明
電気をつくる、電気を売る―そこには必ず紛争と抗争が勃発する。自ら作った発電所を戦前の国策会社に吸収され、戦後取り戻そうと戦い続けた加藤金次郎。官僚による電力の統制に抵抗し続けた「電力の鬼」松永安左ェ門。発電所の労働組合と共産党の弱体化のために撹乱工作した右翼活動家・田中清玄。原子力発電を特急で日本に導入しようとした正力松太郎と中曽根康弘。戦後の電気業界再編を、強烈な個性を発揮する人物を軸に描くノンフィクションにして、55年体制ができるまでの戦後社会史。
目次
序 敗戦の夜
1 日発総裁、殺人未遂で訴えられる
2 スキャンダラスな風景―電力事業再編成の攻防
3 受難に立つ加藤金次郎
4 電力飢饉と電源開発
5 次男坊と原子力
6 停電と機関銃―電源防衛戦PART1
7 電源防衛隊、二つの活動―電源防衛戦PART2
8 民主と修養―電源防衛戦PART3
9 原子力特急・正力松太郎
10 最終戦争の時代と原子力
著者等紹介
田中聡[タナカサトシ]
1962年富山県生まれ。富山大学人文学部卒業。同大学文学専攻科修了。膨大な資料をもとに、思わぬ角度から歴史に埋もれた事象を掘り起こすノンフィクションを数多く著している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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海星梨
10
世間の噂や雰囲気も込みで語られる戦後の電気事業史。濃厚で、政治系は詳しくないので全部拾えていないところも。あちらはこう、こちらはこう、という切り口のまとめ方で、多角的に当時の状況を感じれて良い。電気業界の歴史だけど、アメリカ中心のGHQの占領下、そして始まった冷戦に日本が巻き込まれていく様子がよくわかる。現代の原発問題などの背景もわかった。その分野の最適解ではなく、政治的な事情で歪められていった様を克明に描いていて、現在の産業や企業自体がそういう性質を持っているんだと腑に落ちた。戦前の方もぜひ読みたい。2023/09/19
かもすぱ
8
電力をめぐる戦後政治史。戦前の統合電力企業「日発」をはじめ、総理大臣をはじめとした政治家、GHQなどアメリカ勢力、経営層、労働組合、共産党、コミンフォルム、ヤクザ、擬似宗教団体などが入り混じって、泥臭くパワフルな駆け引きが繰り広げられる。それぞれの勢力が一枚岩でもなく、おのおの利益を追い求める。獄中で共産主義から右翼に転向するなど、ダイナミックすぎるエピソードがいくつかある。今の時代から見たら強引すぎる手法で政治が行われていて、レベルが違うなと思わされる。2024/08/20
okadaisuk8
2
戦後、GHQや保守政党の各派閥、労働組合など様々な利害関係者が絡んで大手9電力(後に沖縄電力も加わり十社)体制ができるまでを描く。戦中のような全国一社体制を指向する官(の一部)と、地域分割独占を指向した民側の対立はよく知られるが、労働争議や政争、さらには大政翼賛会を支えた人材がここでも動いていたことなどを取り上げた点が新鮮。また、最後の原子力が登場すると、こうしたせめぎ合いを越えて当事者もよく分からないまま原発導入に突き進んでいる様子が伺え、改めて原発の業の深さを感じる。 2020/02/08
TERRY
2
戦後日本の黒歴史書。中曽根さん以外は全て故人なので時効ということなのでしょう。50年も生きてるのに全く知らなかったことがこんなにあるとは驚きです。2019/11/03
モンジー
1
戦争終了当時、配電会社は9会社、発電・送電は全国で1社体制だったで力業界がどのように現在の体制になったのかがよくわかる。電源開発の成り立ちや原子力発電の導入経緯なども記載。 いかに色々な利害関係の上に成り立って行ったのかがわかるし、昔の政治家ってやることが大胆だと感じた。 真面目に読まないと登場人物・組織がどういう位置づけの人や団体だったかよくわからなくなるのが難点。 2020/10/15
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