出版社内容情報
ボルネオ島の狩猟採集民「プナン」とのフィールドワークから見えてきたこと。豊かさ、自由、幸せとは何かを根っこから問い直す、刺激に満ちた人類学エッセイ!
「奥野さんは長期間、継続的にプナン人と交流してきた。そこで知り得たプナン人の人生哲学や世界観は奥野さんに多くの刺激と気づきをもたらした。この書を読み、生産、消費、効率至上主義の世界で疲弊した私は驚嘆し、覚醒し、生きることを根本から考えなおす契機を貰った。」
――関野吉晴氏(グレートジャーニー)
奥野 克巳[オクノ カツミ]
著・文・その他
内容説明
ボルネオ島の狩猟採集民「プナン」とのフィールドワークから見えてきたこと。豊かさ、自由、幸せとは何かを根っこから問い直す、刺激に満ちた人類学エッセイ!
目次
生きるために食べる
朝の屁祭り
反省しないで生きる
熱帯の贈与論
森のロレックス
ふたつの勃起考
慾を捨てよ、とプナンは言った
死者を悼むいくつかのやり方
子育てはみなで
学校に行かない子どもたち〔ほか〕
著者等紹介
奥野克巳[オクノカツミ]
1962年、滋賀県生まれ。立教大学異文化コミュニケーション学部教授。大学在学中にメキシコ先住民を単独訪問し、東南・南アジアを旅し、バングラデシュで仏僧になり、トルコ・クルディスタンを旅し、大卒後、商社勤務を経てインドネシアを一年間放浪後に文化人類学を専攻。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
242
飢餓を恐れるホモサピエンスは、農業革命を皮切りに科学文明と貨幣経済を生み出しました。若しそれが起こらなかった時の答えの一つ。常識を大きく揺さ振る狩猟採集民の社会。恐らく森の豊かな恵みがあるからこそ成り立つのだと予想しますが。競争が無く、貧富の差や心の風邪が起こり得ない社会構造。現在ストレス等を抱えている人でも、この社会ならそんな問題は生じない筈。しかしこの社会に、ニュートンやガロアやノイマンetc. が生まれたとしても見過ごされるのでしょうね。善し悪しの問題では無いと思う。もっと書きたいけど紙幅が無いよ。2022/11/29
榊原 香織
127
森のニーチェ、プナン族。 アナーキーな・・。価値観が違いすぎて新鮮、だけど、無理~。 あ、でも面白いです。最近の人類学は哲学に寄ってる2025/04/27
やも
80
プナンの人々は反省という概念がない=善悪の概念がない?/個人の反省の代わりに集落でこれからどうするを話す/ありがとうに担当する言い方として「良い心」/生年月日を意識しない時間の流れ/貸し借りの概念がない/死も当たり前のこととして恐れていない。/日本で生きてきて培ってしまった【当たり前】とは違う価値観ばかりで、途中難しくて理解が追いつかない箇所もあったが、興味深く読んだ。プナンの人々には自死やストレスが少ないとのこと。全ては無理でも、ストレスを感じてる人には何かしらヒントになることが書かれていると思う。2023/02/21
sayan
73
自明のものとして疑わない前提を揺さぶり、人類を尺度として指向する学問=すなわち文化人類学のエッセンスがこれでもかと凝縮、前提を揺さぶられまくる。とにかく読み進めるにつれて元気になってくる。反省しない、あやまらない、等々、著者の言葉を使えば、皮膚(組織・社会)の内側にきっちり収まってそこで身動きができない我々の自我が疑似解放されるような感覚がある。解放の一例で、森の民の朝、放屁は各々の美的感覚によって生み出された作品として、寝ぼけ眼の聴衆を時には嗅覚的に襲撃しながら激笑の渦に引きずり込むとするパートは秀逸。2020/09/16
tamami
53
前回取り上げた奥野先生の『絡まり合う生命』が「人間を越えた人類学」の理論書であるとすれば、本書は研究初期、ボルネオ島の狩猟採取民プナンとの長期滞在生活による研究の成果ということができるだろうか。感謝や反省の言葉もなく時間の概念も乏しい、我々現代人とは全く違った世界観の元に生きているプナンの人々。そんな人々との生活を通して、見えてきた現代文明に対するアンチテーゼともいうべき彼らの生き方や、プナンの人々と様々な自然との関わり方に対する新しい見方は、現代文明世界に首まで浸かっている我々に大胆な思考の転換を迫る。2022/03/12