出版社内容情報
福島第一原発から200kmも離れていながら「ホットスポット」になってしまった千葉県柏市。消費者―農家―流通―飲食の四者による、食の安心と安全を求めた「地産地消」ムーブメントを追い、これからの地域のあり方を提示する。
目次
第1章 円卓会議の1年(震災以前―根づきはじめていた「信頼」;あの日から―暗闇で始まった模索 2011年3月~5月;重い空気―6~7月 ほか)
第2章 「あの日」から―それぞれの一年(市村日出夫さん(ストリート・ブレイカーズ代表)
亀岡浩美さん(ストリート・ブレイカーズ事務局)
小川幸夫さん(農家) ほか)
第3章 私たちが目指すもの(円卓会議の出発点;「My農家を作ろう」方式がもたらしたもの;「My農家を作ろう」プロジェクトと柏の農業の未来;柏発の社会運動論;郊外の消費社会と地産地消)
著者等紹介
五十嵐泰正[イガラシヤスマサ]
筑波大学大学院人文社会系准教授。専門は都市社会学・国際移動論。生まれてこのかた38年間暮らしてきた柏市で、音楽や手づくり市などのイベントを数多く行ってきた「ストリート・ブレイカーズ」に05年より参加、まちづくりに実践的に関わる。『エコノミスト』『POSSE』『現代思想』、ウェブサイト「シノドスジャーナル」などにも寄稿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
11
確か柏市は水素爆発したときに、Jカーブのように群馬県方向へ分岐した気流と、東京湾へ抜けた気流の分岐点として、高濃度汚染地域として2011年10月のテレ朝系報道STで紹介されていたのを想起する。東大柏の葉CA内が高濃度汚染(022頁)。ホットスポットは調べてみないとわからない危うさがある。実際、原発構内での作業員への線量情報が知らされないという愚策も露呈している。逃げない仲間をもつ著者は恵まれている人だ。匿名ではなく、個人名で登場する安心感もある。著者らの、柏という地への愛着が深いからこそ為せる技である。2013/05/25
メルセ・ひすい
3
「安全・安心の柏産消柏」円卓会議…柏市周辺の消費者3名、生産者4名、流通2名、飲食店2名、およびNPO法人ベクまる 千葉県柏市の暮らしが参加し、ジモトワカゾー野菜市 を開催してきたストリート・ブレイカーズが事務局を務め、2011.07に発足。安全基準や測定方法、情報公開などをひとつひとつの協動体に決めて実行する。 安すさの背景にあった「地産地消」。放射能汚染で分断された「産」「地」「消」間の信頼を再構築し、お題目で終わりがちな「地産地消」を危機のさなかから実現した柏の1年間を綴った貴重な記録。2013/02/11
qoop
3
原発事故後のホットスポット報道で、ゆるくつながっていた生産者と消費者とが分断された千葉県柏市。著者たちの活動眼目は、事故以前の(雰囲気としてのロハス、のような)関係性の修復ではなく、より確たるつながりの創出にある。本書はこれまでの活動を概括し、今後の展望を示す。そこにあるのは空疎な言葉だけの〈絆〉ではない。地元に根ざした、力強く中身のあるつながりだ。原発事故以降、断絶を押し進める言動は内外に散見される。そうした言動の是非を考える上でも読むべき良書。2013/02/04
Hiroshi Fukuchi
3
第一章を読み終えた時点でツイッターに「感動した」旨の感想を上げたら、著者ご本人から「そんなオーバーな」との反応を頂いた。 でも、これは一つのドラマティックなドキュメンタリーだし、 311語の日本で起こった混乱を鎮めるための、最良の選択だし、2013/02/02
りんご
2
ホットスポットとして知名度を上げてしまった柏にて、農家、流通、消費者、飲食業といった様々な立場の人たちが話し合い、みんなが安心できる野菜の放射能測定の方法と基準を検討していった取り組みを紹介する本書。単なる原発事故・放射能汚染の話だけではなく、地方都市における消費者と生産者の関係についての考察がとても興味深かった。そう遠くない柏にこんなにも様々な顔があることを初めて知った。2013/10/24