内容説明
齢80歳にして、ますます先鋭にして明晰、『逝きし世の面影』の著者と、学生との2日間にわたる奇跡のセッション。近代の突端を生き延びるには?
目次
1 子育てが負担なわたしたち
2 学校なんてたいしたところじゃない
3 はみだしものでかまわない
4 故郷がどこかわからない
5 親殺しと居場所さがし
6 やりがいのある仕事につきたい
7 自分の言葉で話すために―三人の卒業生
無名に埋没せよ(渡辺京二)
著者等紹介
渡辺京二[ワタナベキョウジ]
1930年京都生まれ。旧制第五高等学校文科を経て、法政大学社会学部卒業。評論家。河合文科教育研究所特別研究員。主な著書に『北一輝』(ちくま学芸文庫、毎日出版文化賞受賞)、『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー、和辻哲郎文化賞受賞)、『黒船前夜』(洋泉社、大佛次郎賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
34
津田塾と渡辺京二のコラボ。この人の言葉や作品は、何というかほかの知識人と違い地に足がついているような考え方で、読んでいて安心できる。近代の「自分探し」なるものと、社会に役に立たなければならないという強迫観念を結びつけたところなど、そういう物に対する気持ちも自分に残っているので読んでいて何とも言えない気分になった。就職は経済状況の問題で社会に必要とされていないわけではない。「無名に埋没する」親の偉大さ等なかなか言えるものではない。現代日本の違う意味でのディストピアに疲れた人は一度読んでみるのをお勧めします。2013/06/23
ワッピー
33
初・渡辺京二。「逝きし世の面影」「黒船前夜」の前に日和って手に取りました。三砂ちずるゼミの女子大生・院生たちの研究に渡辺氏がコメントする形で、「子育てはなぜ負担か」「学校教育」「発達障害」「帰国子女の損得」「国際協力」「社会福祉ヘの就職はなぜ反対されるか」のテーマについてコメント。詳細な中身は本書をお読みいただくとして、自分の意見を発表し、異なる視点・価値観の意見を聞き、それをどう受け止めるか、対話をすることの重要性は伝わってきます。渡辺氏の使うわからない言葉をいちいち辞書を引きながら確認していく ⇒2025/02/08
朝日堂
29
人がこの世に生まれた理由を「この世界の美しさを見てもらうため」とリルケから引き「自己は生まれたときに実現している」とする。したがって社会のために役に立とうなどと思う必要はなく、自己はそれを超えた自然の美しさの前に存在意義があると説く。さらに「人とのつきあいがうまくいかないとか、集団というのが好きじゃないとか、そういう性格があるとしたならば、それを磨くということが大事であって、まかり間違っても、自分はあまり社交的な人間ではない、だから自己啓発だといって、自分を作り替えないことです」と語る。思想書として好著。2013/07/16
南北
11
津田塾大学の三砂ゼミの学生が卒論をテーマに80歳の歴史家の渡辺京二と対話した記録です。津田塾大学では二年からゼミがあるとのことで、それぞれの学生が時間をかけて見つけていったテーマについて渡辺京二が語っていきます。年齢も性別も異なる対話から生み出される一致点や相違点はいろいろと気づかせてくれることがありました。最後に渡辺京二が自分の半生を飾ることなく語っているのてすが、これがあることで学生たちとの対話で出てきた見解の背景がさらにわかりやすくなったと思います。2018/12/01
勝浩1958
9
渡辺氏が孫のような女子学生に「あなたたちの志は気高くとてもりっぱだよ。でももう少し肩の力を抜いて事に当たったほうが良いんじゃないのかな。」と言っているような気がしました。自己実現というような風潮に踊らされるな、周りの人の評価を気にせず、自分の考え方や生き方を磨きなさいと仰います。今に生きる我々にはかなりの難題でしょう。でも、私は氏の『無名に埋没せよ』には至極感動しました。こんなことを宣う御人はそうそういらっしゃるものではございません。2014/08/20