内容説明
初期著作でオウムに影響を与え、麻原彰晃を高く評価し、サリン事件以後もテロを容認するような発言をやめない中沢新一。グル思想、政治性、霊的革命、殺人の恍惚などの分析を通して、人気学者の“悪”をえぐる。
目次
中沢氏の変節―はじめに
第1章 一番弟子の困惑
第2章 サリン事件の本当の意味
第3章 『虹の階梯』の影響と問題点
第4章 コミュニストの子どもとして
第5章 テロを正当化する思想
第6章 宗教学者としての責任
著者等紹介
島田裕巳[シマダヒロミ]
1953年、東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。宗教学専攻。オウム事件で事実誤認に基づくメディアのバッシングを受け、日本女子大学を辞任。その後、名誉毀損裁判で勝利し、『オウム なぜ宗教はテロリズムを生んだのか』(トランスビュー)でオウム事件を総括した。現在、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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半木 糺
7
中沢という人物は多分に山師的なところがある。本来学者の責務は社会に対し有為な知見と方法論を提供することであるが、中沢は自らが社会を引っ張る「活動家」になろうとした節がある。いや、中沢だけではない。本書の島田氏もまたその意味では同罪である。90年代以降、社会学者や宗教学者がメディアにてさかんに「生き方論」を人々に唱えるようになったが、それはアカデミズムの範疇から外れるものである。そのような「学者のタレント化・キャラクター化」がオウムを生み出した一つの原因ではないだろうか。2011/04/16
白義
5
中沢新一がオウムといかに関わり、またその思想がどう影響を及ぼしたかを分析した労作。中沢批判にとどまらず、宗教学者としていかに社会に責任を負い、果たすか、どう関わるかについても問題提起をしている。とりわけ虹の階梯のグルイズムを分析、批判した章は圧巻。一方で、中沢の伝記的部分や思想の内在的批判は今後の課題として残された感も。霊的次元を重視する思想がいかなる危険性を持つかについての、優れた警告書である2012/03/08
さえきかずひこ
4
中沢新一のオウム事件に対するふるまいに問題があるのも確かだが、これは彼の現世否定を肯定する宗教者と世間に顔向けする宗教学者としての間での葛藤が露になったものだ。第四章、とくに162-165ページあたりの論理展開がひどい。できそこないの大学生の論文を読まされているような気分になる。中沢批判には価値があるが、島田の文章にもだいぶ問題がある。2009/06/11
小鈴
2
島田との対話を避ける中沢新一へのラブレター。(感想の詳細は後日)2011/04/22
taitaiyaki
1
中沢新一さんの『チベットのモーツアルト』80年代に読みました。オウムは私にとってはさけては通れない問題です。私の中には確かに中沢さんに同意する部分もあるから。これは、自分の問題として受け止めました。島田さんのオウム関連の本は他にも読みましたが、とても真摯に事件を分析していると思います。中沢さんとオウムの関係、グルイズムの危険性、現在のアーレフのおかれている状況など頭の中の整理に大変役立ちました。2013/01/22