出版社内容情報
戦後、西ドイツは加害の罪を贖い、経済大国として進む道を選んだが、最近のコソボ空爆、イラク戦争を強行する米国への反発、東欧による敗戦ドイツ人迫害への告発、ユダヤ人問題へのスタンスの変更、移民排斥など、一連の“タブー”を破る動きをレポート。
内容説明
ドイツはフランスと並んでイラク戦争反対を押し通した。「過ぎ去らない過去」に縛りつけられ、「国益」を口にできなかったドイツは、いま新たな局面へと踏み出し始めている。米国と協力関係を築くケースも含みながら軍事貢献を拡大する一方、外交に時として反米、反戦の傾向も反映する。一見矛盾する行動のようだが、ドイツが、いままでの「過去」のしがらみから解放され、外交・軍事のフリーハンドを徐々に獲得する姿だといえよう。それを後押ししているのは、ドイツ国内における外国人問題での、歴史認識での、あるいは戦後補償問題での「戦後」からの離陸である。
目次
序章 「戦後」の終焉
第1章 移民政策の隘路
第2章 「過去の呪縛」から解き放たれて
第3章 ドイツ統一の「負の遺産」
第4章 「人道介入」するドイツ軍
終章 「普通化」の次に来るもの
著者等紹介
三好範英[ミヨシノリヒデ]
1959年東京都生まれ。82年東京大学教養学科相関社会科学分科卒業。同年読売新聞社入社。前橋支局を経て、88年外報部(現国際部)、90年~93年バンコク支局、プノンペン支局、94年~96年北海道支社、97年~2001年ベルリン支局。現在東京本社国際部勤務
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感想・レビュー
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たけふじ
1
同じ敗戦国であるのに、日独の安全保障に対する態度は全く異なっている。それは地政学的な問題が大きく影響している。それを踏まえて、ドイツのメンタリティが「もう戦争は起こさない」から「もうジェノサイドは起こさない」、そして「冷徹に国益によって動く」普通の国になっていく。従来日本はアメリカの傘の下で庇護下にあったが、それが取り払われかねない今、「もう戦争は起こさない」というテーゼから変化が起きるのだろうか。(一般的な意味での)「現実主義」路線を取るかどうかは自国がその状況に陥ってからでないと難しいのかもしれない。2016/03/07