出版社内容情報
世界各国で富の格差が広がるなか、それに歯止めをかける手段としての富裕税に関心が高まっている。第一線の論者たちが国際的な知見をもとに多角的に検討し、不公平税制の是正にとどまらず、日本において富裕層の資産に課税する富裕税の導入を提起する。
【目次】
本書刊行に寄せて[ガブリエル・ズックマン]
はじめに[醍醐聰]
第1章 貧困と格差が拡大する日本社会[宇都宮健児]
1 貧困と格差が拡大する日本社会
(1)高い相対的貧困率
(2)このところの物価高騰で生活に困窮している人が急増している
2 日本社会で貧困と格差が拡大してきている要因
(1)社会保障の貧困
(2)労働の貧困
(3)不公正な税制
第2章 なぜ富裕税なのか[醍醐聰]
1 増加する財政需要に見合う新たな安定財源の必要性
(1)高齢化に追いついていない介護関連の歳出
(2)需要に追いつかない子育て支援――学童保育の場合
2 税の財源調達機能からの検討
(1)増税できない日本でよいのか?
(2)国債費で税収の45%が消える時代が迫っている
(3)事実に反する国債増発無害論
3 所得税増税の限界
(1)所得格差を凌駕する資産格差
(2)資産格差は所得格差と連動していない
4 消費税か、富裕税か?
(1)世代内と世代間の負担の公平
(2)税収規模と税の公平負担から見た比較
5 富裕税の制度設計
(1)私案と税収試算
(2)配当所得の源泉となる企業の留保利益への課税も
6 富裕税への抵抗にどう向き合うか?
(1)財産権を盾にした原理主義的抵抗
(2)居住用不動産をめぐる財産権と課税権
7 富裕税根拠論のアップデート
(1)結果の不平等と機会の不平等
(2)応益説の思想史――ルソーとスミス
(3)特恵に着目したシーヴ=スタサヴェージの富裕層課税論
8 検証――機会の不平等と結果の不平等のリンケージ
(1)富裕層は金融所得等の分離軽課の特典を享受してきた
(2)保有不動産に対する逆進課税
(3)市街地開発の外部効果の享受
(4)富の格差是正に寄与しない相続税
(5)富の公的な相続に寄与する富裕税
第3章 富裕税は机上の空論か?――富裕税の実現可能性を考える[近藤克彦]
はじめに――昭和の富裕税
1 富裕税の必要性
(1)相続税節税の対応策