内容説明
「ロックダウン」「経済的合理性」「生物学的な生」「トリアージ」「命の価値」…。新型コロナウイルス(COVID‐19)が猛威を振るうなか、「生政治」や「剥き出しの生」といった概念のもと、パンデミックの深刻さを矮小化するコロナ懐疑主義。パンデミックにおける知識人たちの欺瞞を暴き出す。
目次
最良の死
コロナ懐疑主義
いわゆる「生の神聖化」について
アントワーヌ・ルヴェルションとの対話
二〇〇〇年の詭弁
マスクと嘘
トリアージのむごたらしさ
「生物学的」な生―その偉大さと衰退
台風の目のなかの死
命の値段
スモール・ワールドにおける死
コロナ懐疑主義、四ヶ月を経て
問われる破局論
あとがき―否認の罠
著者等紹介
デュピュイ,ジャン=ピエール[デュピュイ,ジャンピエール] [Dupuy,Jean‐Pierre]
1941年生まれ。フランスの哲学者。理工科学校名誉教授、スタンフォード大学教授、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)倫理委員会委員長を歴任
渡名喜庸哲[トナキヨウテツ]
1980年生まれ。立教大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鴨長石
1
副題から、著者が(下品な言葉で申し訳ないが)「コロナ脳」であることは予想できたので、なぜそのような考えが生まれてしまうのかを知りたくて読んだ。コロナ禍と2000年問題を同列で語ること、感染症の流行のみならず地震などの自然災害でさえも(!)人為的な破局と捉えていることがすべてではないかと思う。なお本書で批判されている思想家たちの発言は自分には概ね全うに思えた。むしろ西洋ではそのような「コロナ懐疑主義」の声が聞こえてこないように感じていたので、思ったより知識人たちが言うべきことを言っていたと知れてよかった。2023/05/16
地面の底
0
面白い議論が豊富に含まれているのだが、「生物学的生」への批判は言葉に囚われているように思う。確かに自然にある偶然性や非決定性といった複雑さの議論は重要なのだが、コロナに対する政策を生政治として非難する人々が主張するのは、生権力がそうした複雑さや豊かさをただ生きることへと単純化して貧しいものにしてしまうことなのではなかったか。その場合デュピュイと彼らにそれほどの距離はない。 また、確かに我々はまず生きなければならないのだが、我々がただ生きることができないのも事実だろう。本書は権力の問題に無頓着なように思う。2024/04/06