内容説明
日本人と外国人が同じ場所で暮らすとき、何が起きるのか。住民には、どのような感情が生まれるのか。そこで起きること、芽生える感情に対して、どうすればいいのか。そんなことを問いかけながら芝園団地で暮らす、一人の住民の記録。日本人住民の間に芽生える「もやもや感」と、見えない壁を乗り越えようとする人々を描いたノンフィクション。
目次
第1章 一つの団地、二つの世界
第2章 ふるさと祭り
第3章 「もやもや感」の構造
第4章 中国人住民の実像
第5章 共生への模索
第6章 芝園団地から見る日本と世界
著者等紹介
大島隆[オオシマタカシ]
1972年、新潟県生まれ。朝日新聞政治部記者、テレビ東京ニューヨーク支局記者、朝日新聞ワシントン特派員、国際報道部次長、GLOBE副編集長を経て政治部次長。この間ハーバード大学ニーマン・フェロー、同大ケネディ行政大学院修了。大学時代に中国人民大学に1年間留学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えちぜんや よーた
104
大阪に住む自分が埼玉県川口市の芝園団地を知ったきっかけはあるブログ記事を読んだことだ。その記事は写真も頻繁に使われていて「エスニックやわぁ」という印象で終わってしまった。だが本書を読み終えるとそんな単純な話ではないことがよく分かった。総括的な意味で最後の方に学術的なことは書かれているが、それよりも著者自身が芝園団地に実際に住んでみて体験したことの方が興味深い。今後、日本では住民の半分が外国人になる町というのも珍しくなくなるだろうから、この本はそのときの参考書になるだろう。2020/08/11
どんぐり
91
安田浩一の『団地と移民』にも出てくる埼玉県川口市の芝園団地。大友克洋の漫画『童夢』のモデルになった場所で、団地が完成したのが1978年。いまは住民の半分が外国人で、中国人住民の増加と日本人住民の高齢化で急速に変化し、1つの居住区に交わらない2つの世界がパラレルワールドとして現れている。そこに2017年から住み始めた著者の大島さん(現在は朝日新聞ワシントン特派員)が、「私たちの団地だったはずが」の住民の意識や行動、団地の自治会、「芝園かけはしプロジェクト」などをリポートしている。特に、中国人住民のゴミ問題や2020/07/28
Willie the Wildcat
85
US/Sweden/SG/JP、これまでに生活した4か国。どの国でも安全性と利便性を重視。人種を意識したことはないが、意識せざるを得ない体験は数えきれない。『モヤモヤ感』は万国共通であり、『不満の二重構造』も至極自然なヒトの感情。共存・共生云々を意識せず、最低限のProtocolを理解・順守し、自分の軸を守る。過渡期を経て、落ち着くところに落ち着くはず。偏見・差別の無いコミュニティ?う~ん、希望は捨てないが過渡な理想家でもない。但し、それなりに”痛み”を経験した分だけ、心に余裕を持つことだけは心がけたい。2020/02/29
なゆ
77
ふと気になって手に取ってみた。気がつくと、近隣のコンビニをはじめ飲食店でも外国人のバイトや店員さんがやたら多い。スーパーで買い物してても、見た目だけじゃわからないが日本語じゃない会話が飛び交っている。この本に出てくる芝園団地はURの物件で、著者が団地の住民となり自治会の活動をしながら書かれている。住民の過半数が外国人で、住んでる日本人も高齢者が多いとなると、いろいろ大変そうだ。共存と共生。そして、ひとくくりにして批判したり、ステレオタイプなイメージを取り払うこと。わかってても、難しいのだろう。2019/12/23
おさむ
52
外国人労働者の受け入れ拡大が始まる日本だが、既に多くの外国人が日本で働き、生活している。本著は中国人が過半を占める埼玉県内のUR団地に住む新聞記者の体験記。生活者であり観察者。二つの視点がある事でバランスがとれた作品になっている。単純な異文化交流、多元主義では「もやもや感」が残る。多数派から少数派へと変わる側の持つ不安と不満。それは、米国のトランプ大統領の支持者達にも通じる感情だと著者は指摘する。共存か、共生か。これからの日本を考える上でヒントがもらえる良書。読売新聞の書評欄でも取り上げられていました。2019/11/04