内容説明
ギリシア哲学の権威にしてハイデガー研究の第一人者でもある著者が、「存在の故郷」を求むべく古代ギリシアの文献を読み解き、人類にとって原初の思索・哲学を「みずみずしい姿」で蘇らせると同時に、その検討を通して西洋哲学一般、近代科学、現代の人間の思考のあり方そのものに疑問を呈する。過激にして痛快な現代文明批判の書(上下巻)。
目次
ゴルギアス
ソピスト―存在の残響
プロタゴラスvsソクラテス
プラトン
アリストテレス
ヘレニズム哲学
新プラトン哲学
ギリシア哲学と魂(プシュケー)
ハイデガーと西洋形而上学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gokkey
12
これは古代ギリシア哲学演義と名付けても良いかもしれない。ハイデガーが「現象学の根本問題」で警鐘を鳴らした西洋形而上学の危機の日本語版であり、ストーリー仕立てに仕上げた読み物だ。「近代世界は主観性に覆い尽くされた最終的な帰結なのだ」という上巻から何度も登場するこの悲壮感溢れるフレーズから先に進まない。哲学は人類を見捨ててはなりません(本書p351)という力強い言葉はあるが、著者なりの「ではこれからどのように人間活動や科学技術はあるべきか」という論考が最後まで聞けなかったのは残念と言うほかない。2020/10/29
Ex libris 毒餃子
9
ソクラテスの章がないのは意外。上巻の方が熱量が強い。最後の2章でクサカベクレス哲学が炸裂して面白かった。ピタゴラスがギリシアにもたらした「主観性」が西洋哲学に深く根付いたのがよく分かった。ソクラテス、プラトンが当時のギリシア哲学からすると異端であったのだろうが、今、スタンダードになっているのはキリスト教の教えと適合する部分があったからだろう。良本。2021/12/11
Οὖτις
1
上下巻ともに時間をかけ、自分の中で消化しつつ読み勧めた。世界観にかなり影響を受けたと思う。これからもまた考え続けていきたい。ありがとうございます。2022/07/11
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