出版社内容情報
割り当てられた性に対して非同調の人々、トランスジェンダー。性自認の性を女性とも男性とも断定できないなど、性別(ジェンダー・アイデンティティ)のとらえかたは多様であいまいである。医療言説の分析、当事者、運動団体、親へのインタビュー等により、現在生じている新たな現象を概観し、自己像を多様であると見なす認識のあり方や、他者との関係性をあきらかにした意欲作。
石井 由香理[イシイ ユカリ]
著・文・その他
目次
序章 性別越境概念とその社会的意味づけ
第1章 独自化する自己像とライフストーリー
第2章 医療言説における揺らぐジェンダー概念と再帰的自己
第3章 「性同一性障害」カテゴリーと非当事者の関係性―当事者団体の活動に着目して
第4章 当事者演劇におけるジェンダー・イメージの変遷
第5章 トランスジェンダーの子どもをもつ親の語り―受容と関係性再構築をめぐって
第6章 多様性言説と新しい主体
著者等紹介
石井由香理[イシイユカリ]
神奈川県出身。首都大学東京大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(社会学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、南オーストラリア大学客員研究員を経て、東洋大学社会学科助教。専門は、ジェンダー、セクシュアリティ、障がい学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たろーたん
1
二章のトランスジェンダーに対する医療の変遷が面白かった。初期の医療は生物学的性と性自任の食い違いを解消するものだった。しかし、現在は、性の多様性やライフスタイルが重視され、精神的なケアも含めて、自分の性の違和感を解消していくものになった。そのため、画一的も「男→女(その逆)」にするものではなくなってきている。ポストモダニティにおいて、医療の役割は、当人から語りを引き出し、治療によってジェンダーや自己像の問題を解消させるものであり、また再帰的変化を観察、把握し、主体を監視・管理するモノになってきている。2018/07/22