内容説明
74本の木の姿に、たしかな暮らしのありかを探す詩編。
目次
1 たずねる木(はじまりの木;凍れる木 ほか)
2 ゆるがない木(存在の木;奇跡の木 ほか)
3 ささやく木(交感の木;笑う木 ほか)
4 立ちあがる木(まっすぐな木;予感の木 ほか)
著者等紹介
和合亮一[ワゴウリョウイチ]
1968年、福島市生まれ。詩人。高校の国語教師。第一詩集『AFTER』(思潮社)で第4回中原中也賞受賞。第四詩集『地球頭脳詩篇』(思潮社)で第47回晩翠賞受賞。現代詩の旗手として、詩作のほかにラジオやイベントなど多彩な分野で活躍。2011年3月11日の東日本大震災での被災直後からtwitterで綴った「詩の礫」が話題となる。震災後の活動について、みんゆう県民大賞、NHK東北文化賞など受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
129
これはお勧め。日本の現代詩のように難解で分かりにくい詩はほとんどなくて、非常に読みやすい。全て木のことを描いたところに特長があり、木の葉を渡るそよ風を全身で感じられるような清々しさがある。同郷の詩人長田弘さんの「大きな木」を何度も思い出しながら読んでいった。長田さんは亡くなってしまったが、長田さんが表現しようとしたことは、和合さんに受け継がれているような気がした。このような香気を感じる透明な言葉は、私たちの心の栄養分だと思う。2016/01/14
けんとまん1007
15
木。自宅の敷地にも木がある。ボランテイア活動で森林整備のため、木に触れることも多い。よく思うことがある。一つの生命体としての木の存在感だ。寡黙でもあり、また、雄弁でもある。その佇まいから、いろんなことを感じ取ることができる。小さい頃、自宅の木に、よく登った。そこは、別世界。何故、登りたくなるんだろう。そこは、山と同じかもしれない。一本一本に個性がある。まるで、人と同じ、いや、生命体だから同じか。いろんな木がある。だからいい。そんな木を蔑ろにする人は許せないと思う反面、哀れさをも感じてしまう。2015/07/18
kentaro mori
4
「木は人の比喩だ。/なぜならいつも立ち続けているからだ。」一本の木、たくさんの木。木はイメージを喚起する。「風に吹かれたいとき それは もう/あなたの心を 吹き渡っています/木は あなたの訪れを 待っています/時は 満たされています」(はじまりの木)ー「あなたは/たった/一人では/本当に/か弱い/悲しい//この世界は/一人では/あまりにも/広すぎる/残酷すぎる/だから//手を/つなぎませんか/そうして/生きて/いきませんか/私もまた//か弱くて/悲しくて/いつも/手探りしています/あなたと/同じなのです」2018/05/09
とよぽん
3
詩人の「あとがき」に「木は人の比喩だ。なぜならいつも立ち続けているからだ。」とある。福島の木の姿を見つめ、詩人はそこに暮らしのありかを新しく探していることに気付く。復興に向けて、詩の「言葉の力」が人々の背中をやさしく押してくれることを、確かなものとして感じる。2015/07/26