内容説明
最近の経済の停滞に至る30年の間に、かなりの数のOECD加盟国で賃金格差が広がるとともに、世帯所得の格差も拡大した。このような事態は経済成長と雇用の確保の両方が持続的であった時期にも起こっていた。この報告書では、このようなさまざまな格差の拡大の背後にある主要な要因を分析する。まず、経済のグローバル化、熟練労働が優位になる技術進歩、制度改革と規制改革などがどれだけ稼得所得の格差に影響を及ぼしたかという問題を分析する。さらに、家族形成と世帯構造の変化がどのように世帯の稼得所得や世帯全体の所得の格差を変化させることに影響を与えたかについて分析し、その証拠となる結果を示す。また、税制と社会保障の給付の仕組みが、世帯所得の再分配の仕方にどのような変化をもたらしたかについての分析を行う。これらの分析をもとに、この報告書では、格差の拡大に対処するために最も効果的なのはどのような政策なのか、また各国の予算の制約が厳しい中で、格差是正に関連する諸政策について、どのような組み合わせ方が可能なのかについて検討する。
目次
概要 OECD加盟国における所得格差拡大の概観
特集 新興経済国における格差
第1部 グローバル化、技術進歩、政策は賃金格差と所得格差にどのような影響を及ぼすのか(経済のグローバル化、労働市場の制度・政策、賃金格差の動向;経済のグローバル化と制度・政策の変化の所得格差への影響;就業者と非就業者の格差)
第2部 労働所得の格差はどのように世帯可処分所得の格差を引き起こすのか(所得格差の要素:労働時間、自営業、非就業;世帯の就業所得の格差の動向:家族構成の変化が果たす役割;世帯就業所得の格差から世帯可処分所得の格差へ)
第3部 税と社会保障の役割はどのように変化したか(税と社会保障による所得再分配機能:過去20年間の変化;公共サービスが所得格差に及ぼす影響;高額所得者の傾向と租税政策)
著者等紹介
小島克久[コジマカツヒサ]
1990年一橋大学経済学部卒業。1992年同大学大学院経済学研究科修士課程修了後、厚生省人口問題研究所入所。1996年国立社会保障・人口問題研究所(社会保障研究所との合併に伴う再配置)。1998年~2000年厚生省大臣官房政策課専門官(併任)、2003年~2006年内閣府政策統括官室(共生社会政策担当)少子・高齢化企画調査専門官(併任)、2001年~2009年国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部第3室長。2010年より同研究所国際関係部第2室長
金子能宏[カネコヨシヒロ]
1990年一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了・経済学博士。1993年日本労働研究機構研究員、1996年国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部室長、2004年~2010年社会保障応用分析研究部長、2010年4月~2014年3月社会保障基礎理論研究部長を経て、2014年4月より同研究所政策研究連携担当参与。専門は、財政学、社会保障論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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