出版社内容情報
特集1では里親と特に関わりの深い児童相談所と市町村をとりあげ、里親に関する具体的業務、今後の課題、里親からの提言など多様な視点で論じる。特集2では親族里親をとりあげ、日本における親族里親制度の現状と海外での取り組み・課題を紹介している。
特集1 児童相談所・市町村と里親
I 総論
里親と児童相談所と市町村――共に関与することで初めて可能となる里親養育(宮島清)
II 児童相談所の業務
児童相談所の仕事とスタッフ/児童福祉司の一日と一週間(西村武士)
児童心理司の仕事(根本顕)
児童相談所における里親担当の仕事(佐藤隆司)
児童相談所における里親登録の実務と視点(塚原功三)
社会的養護を必要とする状況の発生とマッチングの実際――児童相談所の視点から(幅三平)
里親へ送付する書類の作成(大工廻章子)
児童相談所が委託前の面会、交流を調整・支援する際の留意点(鬼澤平隆)
III 児童相談所・市町村と里親
里親にとって児童相談所とは(新井裕)
児童相談所にとって里親とは(羽柴継之助)
地域に支えられた里子養育(大森健太郎)
市町村にとって里親とは(関根水絵)
IV 市町村の課題
市町村における子ども家庭福祉サービス供給体制の課題と今後の方向(柏女霊峰)
特集2 親族里親
親族里親制度とは(庄司順一)
親族里親制度の現状と課題(林浩康、兼井京子)
児童相談所・里親会の親族里親への取り組み――インタビューを中心に(木ノ内博道)
オーストラリアの親族里親制度(渡邊守)
【エッセイ】
「里親さんに子どもを託すときの願いと思い」(林由紀子)
「里親家庭で育った実子として」(高橋舞美)
【里親制度への期待と里親制度の課題】「子どものための里親制度の充実を」(野田聖子)
「里親子の『現在』を支えることが創りだす社会的養護のこれから」(横堀昌子)
【ブックレビュー】
ジュリア・フィーストほか著[大谷まこと監訳]『実親に会ってみたい』(木ノ内博道)
土井高徳著『神様からの贈り物 里親土井ホームの子どもたち』(米沢普子)
海外文献紹介
トピックス
資料
編集後記
(表紙イラスト『姉弟』:松村優希椰)
特集1「児童相談所・市町村と里親」、特集2「親族里親」の企画にあたって
本巻では2つのテーマを特集とした。
特集1は、「児童相談所・市町村と里親」で、宮島による総論に続いて、里親には特に関わりの深い児童相談所の業務全般と、里親関係の業務について、実務にたずさわっている方に具体的に説明していただいた。里親が生活している場は市町村だと言えるが、これまで里親登録、委託やその後の支援は主に児童相談所(都道府県、政令市が設置)で行われていたために、市町村と里親との関係についてはあまり論じられてこなかった。今後、里親支援機関の創設が予定されているが、里親と市町村との関わりも大事になってくるだろう。市町村における児童福祉実施体制については柏女が現状と課題をまとめている。また、児童相談所、市町村に対する里親の側からの意見も取り上げた。
この特集は、里親に役に立つ情報であるのみならず、児童相談所、市町村にとっても里親に関する業務を整理する上で有用だと思われる。
特集2は「親族里親」である。親族里親は、欧米やオセアニアではかなり普及し、韓国でも親族里親が里親制度発展の大きな部分を担っているが、わが国では平成14(2002)年にようやく制度化された。
わが国の親族里親に関しては、制度上の課題も指摘されるが、自治体間で取り組みに大きなちがいがあり、また何よりも実態が明らかでない。最近いくつか調査が行われたので、それらを紹介するとともに、親族里親制度の課題を検討する上で興味深いオーストラリアの状況について渡邊が詳しく述べているので、参考にしていただきたい。
編集委員長 庄司順一