出版社内容情報
児童福祉、児童養護、児童相談に関する様々な課題について、福祉の実践者や研究者が研究、情報交流し、成果を広く発信する。第1号の特集は「児童養護施設における心理職の役割」。心理職の座談会や児童指導員らのレポートで、心理職と現場職員の連携のあり方を探る。
創刊にあたって(『子どもと福祉』編集委員会)
◎特集 児童養護施設における心理職の役割――現場職員との連携のあり方をめぐって
特集にあたって(二宮直樹:本誌編集委員)
○座談会 心理職として働いて――児童養護施設の現場から見えてくるもの
伊東奈穂(日本児童育成園、子ども家庭支援センター・ぎふ「はこぶね」)
大谷基恵(名古屋市児童福祉センター)
小池純代(名古屋養育院)
廣藤稚子(都筑こども相談室)
○児丘養護施設の現場から
生活につなぐ心理支援とは――那爛陀学苑の取り組みから(小林茂:浦河べてるの家支援員)
筑波愛児園の再生と心理職――権利侵害事件からの5年間(立川弘司:筑波愛児園心理療法担当職員)
心理職はどう連携するか――専門職として、一職員として(小池純代:名古屋養育院心理療法担当職員)
心理職との連携と協働を考える――児童指導員から期待すること(伊藤龍仁:那爛陀学苑主任児童指導員)
児童の社会的自立に向けた心理的ケア――要養護児童特有のニーズに向けて(早川悟司:目黒若葉寮主任)
心理的ケアの課題と新たなニーズ――子どもが安心できる生活づくりのために(高橋朝子:調布学園児童指導員)
○まとめと課題
児童養護施設における心理職――児童相談所心理職の立場から(二宮直樹:愛知県知多児童・障害者相談センター主任主査)
児童養護施設心理職の今後――愛知・岐阜両県での調査から考える(吉村譲:愛知東邦大学人間学部講師)
◎制度と現場のはざまで
現代の子ども・家族問題の焦点(川崎二三彦)
現代の子どもと児童相談所の動向(佐藤隆司)
現代の子どもと児童養護施設の動向――施設の小規模化に潜む問題(浅倉恵一)
現代の子どもと少年法改正の動向――現代型非行の調査の在り方(山田麻紗子)
○当事者の語り
居場所をなくす不安と闘いながら(小林大)
いつも子どもたちの目線で(清水真一)
自立援助ホーム「ふきのとう」と私(澤田正一)
○研究報告
児童家庭相談におけるソーシャルワークモデル(竹中哲夫)
児童養護問題の構造と子育て世帯との共通性――児童養護施設5カ所の実態調査から(堀場純矢)
子ども虐待死の検証に関する考察――先行研究の到達点と今後の課題(加藤悦子)
○現場実践レポート
取手児童虐待事件のもたらしたもの(岡田崇弘)
児童虐待の現場から(北川拓)
乳児院の家庭支援専門相談員の役割(窪田道子)
親子だからできる支援――母子生活支援施設での取り組み(加藤智功)
○エッセイ
私の子育て支援(蜂谷明子)
ある日の児童福祉司(川松亮)
「彼」と私(倉橋幸彦)
○書評
『林先生に伝えたいこと』(永山友里江)
『てぶくろ――ウクライナ民話』(畑井田泰司)
『怒りの方法』(都筑基史)
『ぼくたちの15歳――養設施設児童の高校進学問題』(遠藤由美)
『子どもとマスターする50の権利学習――イラスト版子どもの権利』(遠藤由美)
『エピソード記述入門――実践と質的研究のために』(千坂克馬)
○海外の社会福祉事情〈第1回〉
中国の一人っ子政策とお国柄(野田正人)
児童養護・児童相談に関する新刊リスト
全国児童養設問題研究会(養問研)のご案内
全国児童相談研究会(児相研)のご案内
『日本の児童福祉』バックナンバー
編集後記・次号予告
創刊にあたって
『子どもと福祉』は、全国児童養護問題研究会(養問研)+全国児童相談研究会(児相研)の共同編集誌『日本の児童福祉』を母体とした雑誌で、このたび明石書店から公刊されることとなりました。この機会に、雑誌名を新たにしました。
『子どもと福祉』は、養問研(1972年に発足し今年で37年目を迎えます)が取り組んできた児童養護問題・児童福祉施設(児童養護施設、乳児院、児童自立支援施設等)などの社会的児童養護と、児相研(1975年に発足し今年で34年目を迎えます)が取り組んできた児童相談所・市町村児童家庭相談などと、両者が共通して取り組んできた諸課題を合わせて、いま現場でおこっている「児童福祉」「児童養護」「児童相談」に関するさまざまな問題を、児童福祉の実践者、研究者、学生、また広く一般の読者に向けて発信し、ともに考え学んでいくことを目的として創刊されます。
私たちは、これまでも、児童養護・児童相談の現状や課題を解明し、日本の子どもたちの成長と発達を守り、子育てをする親・家族とともに日本の児童福祉を向上させるために取り組んできました。子どもや家族をめぐる貧困や格差の問題にも注目してきました。このような視点から、国や自治体の制度・政策のあり方や問題点についても、積極的に学び発言し改善を求めてきました。こうした姿勢は今後も維持していきたいと考えています。また、今日まで、さまざまな困難を克服しつつ、現場での実践を大切にし、新しい方法論等を模索され活動に取り組んできた方々の実践や研究に学び、共同の研究・実践活動を育てたいと思っています。
ところで、近年相次いで公表されている児童相談や児童養護に関する政府の検討会等の報告書では、児童福祉施設や児童相談所あるいは児童福祉関係者には、これまで以上に幅広い活動が要請されています。広範な児童家庭相談への対応、施設に入所している子どもだけでなく里親や一般家庭の子育て支援、地域社会で展開される子育て支援、児童虐待防止活動等に、専門性を持った職員としての多様な役割が求められています。しかし、一方では、このような課題に応える現場の体制が十分でなく、職員が疲弊しているという現実もあります。これらすべての現実と課題に目を背けることなく、取り組んでいくことが求められているのです。
そこで本誌の創刊にあたっての私たちの基本姿勢(編集方針)を大きく3点にまとめて掲げておきます。
『子どもと福祉』の目指すところ
1 子どもたちや家族の生活・教育・文化・労働・医療・福祉・地域環境などの現実に基づき、子どもの発達と権利を守り育て家族の幸せを守る立場から、研究と情報交流を進めます。
2 日本の児童福祉・児童養護・児童家庭相談を向上させるために、広く児童福祉・児童養護・児童家庭相談に関わる人々、子ども・家族が共に学び合うことを通して、研究と情報交流を進めます。
3 児童福祉・児童養護・児童家庭相談の制度政策研究、実践研究、制度政策と実践の橋渡しを図る研究、子どもや家族をめぐる社会の現実を解明する研究、新しい施策・制度の提言を目指す研究など、広い視野からの研究と情報交流を進めます。
2008年6月『子どもと福祉』編集委員会
目次
特集 児童養護施設における心理職の役割―現場職員との連携のあり方をめぐって
制度と現場のはざまで
当事者の語り
研究報告
現場実践レポート
エッセイ
書評
海外の社会福祉事情(第1回)