出版社内容情報
全世界において関心が高まる医療の質について、科学的合理性、データの入手可能性、重要性の観点から取りまとめられた国際比較可能な指標を収録。第1次OECD医療の質指標プロジェクト(HCQI)による取り組みの成果。
日本語版刊行によせて
はじめに
概要
第1部 プロジェクトの概要と結果
プロジェクトの目標
これまでの経過:プロジェクトの歴史、概念構成そして手法
プロジェクトの歴史
医療の質をめぐる概念構成
プロジェクトの手法
結果
本報告書の活用法:データはどのように用いられるべきか?
今後の方針
一次指標の国間格差の原因の究明
一次指標の更新
追加指標の開発
第2部 データ比較可能性に関する分析
データ比較可能性に関する分析の要約
年齢補正における基準人口の選定
欠損値の扱い
ワクチン予防可能な疾患の届出
傷病分類(コーディング)の相違の影響
個人識別情報の有無の影響
第3部 指標の定義と結果
データ入手可能性と比較可能性
1 乳がん5年生存率
2 マモグラフィー受診率
3 子宮頸がん5年生存率
4 子宮頸がん検診受診率
5 結腸直腸がん5年生存率
6 ワクチン予防可能な疾患罹患率
7 2歳児における基本的予防接種率
8 5-39歳喘息死亡率
9 心筋梗塞入院後30日以内死亡率/院内死亡率
10 脳卒中入院後30日以内死亡率/院内死亡率
11 65歳以上高齢者の大腿骨頸部骨折後手術までの待ち時間
12 糖尿病患者に対するヘモグロビンA1c検査実施率
13 糖尿病患者における血糖コントロール不良者の割合
14 糖尿病患者に対する眼底検査実施率
15 糖尿病患者における下肢切断率
16 65歳以上高齢者インフルエンザワクチン接種率
17 喫煙率
付録 第二段階への候補指標
訳者あとがき
概要
OECD医療の質プロジェクト(以下、本プロジェクト)は2001年にスタートした。その目標は、一国の医療の質を指標化し、加盟国間の医療の質を比較し、その原因解明と改善のためのさらなる研究を刺激することにあった。指標作りにあたっては、科学的合理性を有すること、医療現場というミクロレベルと一国の医療政策というマクロレベルの双方に重要性を有すること、データが大半の国で入手可能であること、そして国と国とを共通に比較可能であること、を前提とした。もう1つの前提は、本プロジェクトで作る指標は加盟国の「格付け」や「ランク付け」を目的とするものではない、ということである。これら指標の目的は、先に述べたように、なぜ国と国との間に違いがあるのか原因を解明するきっかけを与え、それを基に全加盟国の医療の質を向上させることにある。
本プロジェクトには2つの先駆者がある。1つはニューヨークのコモンウェルス財団による国際共同研究(5カ国)、もう1つは北欧諸国大臣会議医療の質評価ワーキンググループ(6カ国)であった。それが4年たって、23カ国が参加するプロジェクトに発展した(途中1カ国が抜けて最終的には22カ国になった)。
本プロジェクトは二段階に分けられる。今回公表されるのはその第一段階にすぎない。第一段階は医療の質と有効性を測定できる重要かつ容易に入手できる17指標から成っている。この17指標のうち、1カ国を除くすべての参加国が5以上の指標データを提供することができ、15カ国は12以上の指標を提供することができた。今後進められる第二段階では、より幅広い医療分野と医療の質を測定できる指標を開発してゆく予定である。
本報告書の第1部は、本プロジェクトの目的と経緯、そして採択された指標の定義と得られた結果を総括する。
本報告書の第2部は、2004年12月パリでの専門家会合で提示された医療の質指標に関する5つの課題について、2005年春から夏にかけてプロジェクト事務局が行った詳細分析の結果を要約する。これら5つの課題はデータの国際比較可能性をめぐる以下のようなものであった。
●年齢補正のための基準人口には、どの人口を用いるのが適当か?
●欠損値の扱いをめぐる参加国間の方針の違いは、結果にどのような影響を及ぼすか?
●ワクチンで予防可能な疾患の届出制をめぐる参加国間の方針の違いは、結果にどのような影響を及ぼすか?
●傷病分類のしかた(たとえば喘息)をめぐる参加国間の方針の違いは、結果にどのような影響を及ぼすか?
●死亡率比較において、個人を区別できる個人識別情報を使うか否かは、結果にどのような影響を及ぼすか?
第3部は、候補にあがった17指標の科学的合理性、重要性、入手可能性そして国際比較可能性について詳細な検討を行う。同時にまた、当初は候補にあがったが第一段階の13指標に採択されなかった4指標についても検討した。すなわち全候補指標について第一段階指標に採択すべきとされたものとそうでないものの両方を扱う。ただし、第一段階に採択されなかったからといって、第二段階指標に採択する可能性を除外するものではない。候補にあがった指標はいずれも科学的合理性は十分であったが、現時点では国際比較に堪えるだけの数の参加国からデータが集まらなかったため、とりあえず第一段階では採択保留とした、という意味である。
第一段階で採択されたのは以下の13指標である。
●乳がん5年生存率
●5-39歳喘息死亡率
●マモグラフィー受診率
●心筋梗塞入院後30日以内死亡率
●子宮頸がん5年生存率
●脳卒中入院後30日以内死亡率
●子宮頸がん検診受診率
●65歳以上高齢者の大腿骨頸部骨折後手術までの待ち時間
●結腸直腸がん5年生存率
●65歳以上高齢者インフルエンザワクチン接種率
●ワクチン予防可能な疾患罹患率
●喫煙率
●2歳児における基本的予防接種率