出版社内容情報
子どもと前向きな関係をどのようにつくるか、子どもが自分でよりよく生きていくために必要ないろいろな力、価値観、行動を身につけるのを親がどう助けるのか。本書は「前向きな子育て」という呼び方に表される子育てへのアプローチ方法を提案し、実践的なアドバイスを数多く提供します。子育てに携わるすべての親にとっても、保育士、学校の先生など支援する専門家にとっても役に立つ実践書です。
序文
専門家の方々へ
第1部 前向き子育て―概略―
第1章 前向きな子育てとは
挑戦
最も効果的な読み方
子育ての罠
一般的な子育ての問題
前向きな子育てを通して子どもの行動を向上させる
価値観と前向き子育て
子どもが学ぶべき技術
前向きな子育てとは何か
いろいろなタイプの行動問題と情緒問題
子育ての自信をつける
第2章 子育てに成功する基本とは
子育てチームとして協力し合う
子育てのストレスにうまく対応する
支援を得る
仕事と家庭のバランスを取る
育児教室
第3章 子どもの行動を理解するために
遺伝として受け継いだもの――子どもの気質
子どもの健康と行動
家庭の大切な役割
経験から学ぶ
親同士の関係
友だち、学校の影響
親の情緒
親の信念と期待感
地域環境の影響
文化的影響
第4章 子どもとの健康的な関係を育てる
子どもとのよい関係を育てるための方法
好ましい行動を育てる方法
難しい行動を扱う方法
子どもの問題行動に対処する一般的なガイドライン
専門家の助言をいつ求めるか
第2部 前向き子育ての応用
第5章 乳幼児(生後3年までの間)
乳児期特有の問題
幼児期の課題と問題
第6章 就学前児童
家での行動
地域社会での行動
第7章 学童児
学校に関連する特定の問題
家での子どもの行動についての問題
子どもの活動についての問題
ストレスや情緒的問題についての問題
子ども自身で問題解決することについての問題
第3部 前向き子育て―課題に取り組む―
第8章 子育て計画を実行する
子育て作戦を練る
計画を実行に移す
専門家の助言をいつ求めるか
付録1:子どものための食事ガイドライン
付録2:6~10歳の子どもとのリラックストレーニング
付録3:11~13歳の子どもとのリラックストレーニング
付録4:使用フォーム
監訳者あとがき
索引
序文
親でいることよりやりがいのあること、挑戦的なことを探すのは難しいかもしれません。トレーニングを受けたり、何も学んだりすることもなく引き受ける仕事の割には、責任が重い仕事です。多くの親が困難や不安定な時期を体験しているのもうなずけます。
『エブリペアレント』の新版には、どう子どもと前向きな関係を作るか、子どもがよりよく生きるのに必要ないろいろな力、価値観、行動を身につけるのをどう助けるかについて書かれています。子どもの行動や情緒の問題を予防するために、親が毎日の子育て生活によくある状況と行動をどう扱えばよいのかについて、実践的なたくさんのアドバイスを提供しています。本質的には、子育てを少しでも楽にできるように書かれています。著者は親や子どものために働く臨床心理士としての27年の経験から理解していますが、親は一般に自分の子どもにあてはまる、役に立つ、使える具体的なアイデアを求めています。この本はその願いにかなうように書かれました。
『エブリペアレント』が最初に出版されて以来、親や子どもに接する専門家の方々からたくさんのお便りをいただき、もっと書いてほしいという内容についてご意見をいただきました。各章とも、子育て支援の最近の研究成果に基づいて見直し、必要なところを書き直しました。第1刷の成功したゆえんである大切な部分は残っています。一般的によくあるいろいろな行動や情緒問題をどう防ぐか、あるいは、どう取り扱うかを記した部分です。新しく書き足した章は、「子育てに成功する基本」です。家庭を育成していくための方法に力を入れ、親同士またはパートナーとのチームワークを育てる、仕事と家庭での役割のバランスをうまく取る、子どもに対する前向きな考えの重要さ、子育てから来るストレスの対応策、などについて大切な助言をしています。この章では、心配や不安などの子どもの気持ちや感情を、親がどう扱うかに力を入れました。入学、進学するという子どもの移行がうまくいく助けになること、子どもが自立し健全なセルフエスティーム(自尊感情)を育てることにも、力点を置きました。
第1章にある5つの原則となる前向き子育ての理念は健全な子どもを育てる大切な方法として残っています。しかし、「前向きな子育て」という呼び方がこの本の子育てへのアプローチをうまく表しているといえます。前向きな子育てというのは、子どもに生活力をつけるということです。子どもが自分でよりよく生きていくための、社会、情緒、言語、人間関係に関わる力を、親がどう育てていくかが書かれています。これらを早期にしっかり身につけると、子どもに必要な生活力や感情を扱う力が育つと言われています。単に問題行動を減らすとか取り扱うとかではなく、子どもに必要な力を育てることが大切であるからです。このアプローチはシンプルです。子どもが経験している問題に対応する技術や行動はあるということです。子どもはそれらを習い、問題となっている状況をうまく切り抜けていくでしょう。例えば、子どもが何か欲しくてぐずり、もらえなくて叫び出すと親はイライラします。子どもは丁寧に欲しいものをお願いすることを学べばよいのです。そしてもらえない時には、子どもは腹を立てずに悪い答えを受け入れるのを学びます。前向き子育てでは、親はどうやって子どもに他人とうまくやっていく力、つまり、人に受け入れられる行動、態度を教えていくかを学びます。
この本が、私たちの社会で、大切で実は驚くほどやりがいのある仕事である子育てに、よくしつけられた子どもを育てることに、役立つことを願っています。
目次
第1部 前向き子育て―概略(前向きな子育てとは;子育てに成功する基本とは;子どもの行動を理解するために;子どもとの健康的な関係を育てる)
第2部 前向き子育ての応用(乳幼児(生後3年までの間)
就学前児童
学童児)
第3部 前向き子育て―課題に取り組む(子育て計画を実行する)
著者等紹介
サンダース,マッシュー・R.[サンダース,マッシューR.][Sanders,Matthew R.]
クイーンズランド大学臨床心理学教授。及び、ペアレンティングファミリーサポートセンターの所長。子育てと家族に関する心理学、子どもの行動や情緒問題の予防などの研究を行う。国際的に知られたプログラムである「トリプルP:ポジティブペアレンティングプログラム(前向き子育てプログラム)」の開発者。この功績により、オーストラリア政府からオーストラリア暴力防止貢献賞(National Violence Prevention Research Award)を授与される。国際協力予防研究賞(International Collaborative Prevention Research Award)も受賞。オーストラリア心理学協会と実験的犯罪学アカデミーの会員
柳川敏彦[ヤナガワトシヒコ]
和歌山県立医科大学卒業。紀南病院、泉大津市立病院を経て、和歌山県立医科大学医学部小児科助手、講師を歴任、2004年4月和歌山県立医科大学保健看護学部教授に就任。1994年米国テキサス大学医学部ガルベストン校留学、1998年には厚生科学研究の助成を受けロンドン医科大学小児保健学部グレート・オーモンド・ストリート小児病院で小児虐待の予防活動についての研究に従事。専門は小児科、小児神経学、小児保健学
加藤則子[カトウノリコ]
国立保健医療科学院研修企画部長。東大病院小児科研修医、都立築地産院小児科医員を経て、国立公衆衛生院(2002年改組により国立保健医療科学院となる)母性小児衛生学部研究員として、母子保健の研究に着手。10年に1度厚生労働省の行う乳幼児身体発育調査に関わり、母子健康手帳などに掲載されている身体発育のグラフを作成してきた。厚生労働省関係の委員等として政策に関わりながら、小児の発育発達の研究、多胎児の育児支援の研究、前向き子育てプログラムの日本導入に携わっている
梅野裕子[ウメノヒロコ]
小学校教員として6年勤務。国立公衆衛生院(現、国立保健医療科学院)の専攻課程修了。オーストラリア、カーティン工科大学公衆衛生学部、ヘルスプロモーション修士課程修了
志村ゆう子[シムラユウコ]
東京外国語大学フランス語学科卒業。語学学校講師として勤務する傍ら翻訳に従事。小・中学校英語講師を経て、現在、1歳児の母
松本有貴[マツモトユキ#]
和歌山県紀南地方の中学校で勤務後、オーストラリアに留学。クイーンズランド大学心理学部博士課程在籍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。