エリア・スタディーズ<br> リビアを知るための60章

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リビアを知るための60章

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  • サイズ B6判/ページ数 339p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784750323770
  • NDC分類 302.431
  • Cコード C0336

出版社内容情報

地中海沿いに古代ローマ遺跡が点在し、内陸に砂漠が広がる、豊かな産油国リビア。近年国際社会に復帰し、テロリスト支援の危険な独裁国とのイメージを払拭しつつある国と人々の真実の姿を、イスラーム研究者で元在リビア大使夫人の著者が多角的に紹介する。

はじめに
地図・リビアと地中海諸国
1 リビアの成り立ち――地理・歴史・民族
 第1章 リビアの風土――海と砂漠の国
 第2章 古代のリビア――「リビアにはすべてのものがある」ヘロドトス
 第3章 トリポリタニア――ライバルはカルタゴ
 第4章 世界遺産の古代都市1レプティス・マグナ――大理石の都
 第5章 世界遺産の古代都市2サブラータ――モザイクの都
 第6章 世界遺産の中世隊商都市ガダーメス――砂漠の魔法の入口
 第7章 民族運動の狼煙(のろし)――砂漠のライオン
 第8章 フェニキア人の末裔――民族と言語
 第9章 リビア人気質――三つの原点
2 カッザーフィーとリビアの政治体制
 第10章 カッザーフィー――「アラブの狂人」か
 第11章 カッザーフィーの生い立ち――遊牧民の誇りの中で
 第12章 カッザーフィーの革命――周到な準備の成果
 第13章 『緑の書』――カッザーフィーの第三世界理論
 第14章 ジャマーヒーリーヤ体制――政府も議会も内閣もない国
 第15章 カッザーフィーの思考と論理――大量破壊兵器廃棄の理屈
 第16章 啓蒙家としてのカッザーフィー――キリストもルソーも
 第17章 ジャマーヒーリーヤは新しい――今でも通じる理論
 第18章 カッザーフィーの苦悩――変節か臨機応変の対応か
 第19章 リビアの外交儀礼――革命記念日の顛末
 第20章 女たちの革命記念日――カッザーフィー夫人の晩餐会
3 国際社会とリビア
 第21章 テロ支援国家の過去――日本赤軍もカルロスも
 第22章 アメリカとの因縁の関係――二〇〇年にわたる確執
 第23章 過去のテロ事件――アメリカとの駆け引き
 第24章 カッザーフィー爆殺未遂事件――バーブ・アル・アズィーズィーヤ空爆
 第25章 国連制裁解除――「バスに乗り遅れるな」
 第26章 大量破壊兵器放棄宣言――カッザーフィーの大変身?
 第27章 核兵器と大量破壊兵器――いまや無用の長物
 第28章 地中海世界とリビア――新たな関係の模索
 第29章 アフリカとリビア――アフリカの盟主の座
 第30章 イスラティナ構想――妄想か理想か
4 リビアのかかえる国内・外交問題
 第31章 後継者は誰か――セイフ・アル・イスラームの活躍
 第32章 セイフ・アル・イスラームの注目行動――カッザーフィー基金総裁として
 第33章 カッザーフィー基金の役割――セイフ・アル・イスラームの講演
 第34章 リビアのビジネス環境――先行する期待感・足りない受け皿
 第35章 変わらない意識――監視機関「ムラーカバ」
 第36章 特異な行政機構――急激な変化にとまどいも
 第37章 将来への懸案――HIV感染問題とイスラエル問題
 第38章 リビアの若者意識――高い失業率の理由
 第39章 不法在留外国人――よりよい生活を求めて
 第40章 ガーナ出稼ぎ青年の冒険――リビア目指してサハラ砂漠縦断
 第41章 リビアのアフリカ人――直面する厳しい現実
 第42章 急増する交通事故――経済発展の陰で
5 リビア人の生活と文化
 第43章 大人工河川計画――砂漠との戦い
 第44章 タバコは禁止のはずなのに――リビアの宗教
 第45章 タブーの裏表――アルコールは厳禁?
 第46章 ローマの穀倉――オリーブとオレンジの実る地
 第47章 リビア料理は多国籍料理――ご馳走はクスクス
 第48章 独自のイスラーム暦と標準時――リビア暦とエジプトの標準時
 第49章 教育制度――制服は迷彩服
 第50章 女性の立場――カッザーフィー夫人にならって
 第51章 花嫁衣裳は伝統衣装――部族によって異なる色と形
 第52章 首都の諸事情――地中海の砦トリポリ
 第53章 都市のイメージ――外観より内側を重視
6 天然資源と日本との関係
 第54章 高品質の石油――注目の石油・天然ガス探査
 第55章 油田開発の公開入札――日本の大きな賭け
 第56章 日本からの経済投資――技術開発に期待
 第57章 日本とリビアの関係史――資源を求めて
 第58章 リビア人との国際結婚――運命の賭け
 第59章 日本との若い架け橋――相互の文化交流を
 第60章 海・砂漠・遺跡――やさしい人々とともに
参考文献
リビア略史
資料・カッザーフィーの演説
索引

はじめに
 本書は、文化、歴史、宗教、地理、観光案内だけでなく、国際関係、政治体制、経済、カッザーフィー(カダフィ)の思想、教育、社会、移民問題、人々の日常生活、料理などまで、さまざまな視点からリビアを知ることができるように記述されている。
 多くの日本人は「リビア」と聞いてまず何を思い浮かべるであろうか。ほとんどの人々が、「テロを支援する強硬派の国」、あるいは「気違いじみた独裁者カダフィのいる砂漠の国」などといった恐ろしいイメージを連想することであろう。日本人にとって、意識的に遠い中東諸国の中でも、リビアはさらに遠い、地の果ての不気味な国という印象がつきまとっている。
 本書は、このようなリビアのイメージを一新する役割を担っているかもしれない。
 たしかに、一九六九年九月一日の自由将校団によるクーデターが成功して以降、今日にいたる三七年近い歳月、リビアは革命の指導者カッザーフィー大佐の指揮のもとで、特異な政治体制を採用し独自の路線を突き進み、「大リビア・アラブ人民社会主義ジャマーヒーリーヤ」は国際社会だけでなく近隣の中東諸国からも疎(うと)んじられることが多かった。国内のゆたかな石油資源や天然ガスなどから得られる莫大な資金を、国民生活の向上や経済的発展に用いることはほとんどなく、世界各地の諸民族の解放闘争を背後から支援することに専心してきたことも事実である。
 しかし、リビアの政治的な活動や多大な軍事支援は、その理念とは裏腹に、つねに世界各地で物議を醸(かも)しており、その努力は評価されることが少ないものであった。いつのまにか国際社会は、リビアがいま何をしているのか、ということにほとんど関心を示さなくなっていた。
 そういう意味ではリビアは、革命以降の長い年月、欧米を中心とする国際社会に背をむけて、国全体が「別世界」のなかでひっそりと生きていたかのようにみえる。とくに一九九二年に国連安全保障理事会による経済制裁が発動されてからは、まるで眠っていたかのような印象がある。ゆたかな天然資源があったために、国際社会からつまはじきにされ経済制裁を受けていても、貧しいながらも国民が飢えに苦しむこともなく、誰もがひっそりと慎(つつ)ましく暮らしてきたのである。
 そのリビアが、二〇〇三年一二月一九日に突然、大量破壊兵器(WMD)の廃棄を世界に向かって宣言し、国際社会復帰への道を歩みはじめた。この傾向はその一、二年前からみられたが、カッザーフィーによる大量破壊兵器廃棄の宣言は、世界中から驚愕と同時に大歓迎をもって迎えられた。おりからイラク戦争のあおりで国際市場では原油価格の高騰が話題になり、どの国もエネルギー資源の確保にやっきになっていた時期である。不思議なほどのタイミングのよさである。
 私事になるが、私の夫、塩尻宏がリビア駐在特命全権大使として首都トリポリに赴任してから、わずか三カ月後の二〇〇三年九月一二日に国連安全保障理事会による対リビア経済制裁が正式に解除され、六カ月後の一二月一九日に先ほど述べた大量破壊兵器廃棄の宣言が出されたのである。私どもは、まことに運よく、リビアが変身しようとするまさにその時期に居合わせたことになる。
 「テロ支援国」と非難され、「気違いじみた独裁者の国」と恐れられたリビアの素顔は、私にとって、そのような事前のイメージとはまったく異なるものであった。紺碧(こんぺき)の地中海の白い砂浜、透き通った青い空、その下にひっそりと佇(たたず)む世界遺産のローマ遺跡や、白壁の隊商都市、どこまでも広がる砂漠に咲く野の花の愛らしさ、そして、なによりも素朴で穏やかな人々。せわしない現代社会が忘れてしまったものが、ここにはまだ残っている。リビアの人々は、国際社会から阻害されていた苦しい時期をたがいに助け合ってしのいできたためか、いまでも助け合いの精神にあふれた穏やかな人たちである。リビアはまさに、歴史のロマンと古きよき時代のノスタルジアを感じさせてくれる国であった。
 私は、夫がリビアに赴任していた二年九カ月の間、毎年通算して約三カ月を首都トリポリで調査を兼ねてすごした。最初に訪れた時のトリポリの印象は、若いころに暮らしたスーダンの首都ハルトゥームをすこしだけ立派にしたようにみえたものである。広い道路は舗装がはがれていたり穴があいていたり、いつもどこかで地下の水道管から水があふれて道がぬかるんでいたり、家並みも埃でくすんでいて、商店も開いているのか閉まっているのかわからないようであり、街全体に寂しく疲弊した雰囲気があった。
 しかし、その後、数カ月おきに飛んで行くたびに、目をみはるほどの変化が見えてきた。道路の補修もかなり行き届くようになり、新しい商店が次々に開店して華やかなショウウィンドウも出現し、もとからあった商店も改装して明るくなり、ヨーロッパや中国からの物資も豊富に出回るようになった。車、電気製品、コンピュータなどの日本製品もしだいに見かけるようになった。同時に、広い道路を新品の自動車が埋めるようになり、これまでリビアの人たちが経験したことがないほどの交通渋滞も起きるようになってきた。海外から物資が豊富に流入するようになると物価が上がりはじめ、早くも貧富の差が目立つようになってきた。
 二年九カ月の任期を終えてリビアを離任する夫とともに帰国してから二カ月目の今年、二〇〇六年五月一五日、アメリカのライス国務長官が、「一五日以内に在リビア・アメリカ大使館を開設する」ことと「四五日以内にリビアをテロ支援国リストから削除する」という発表をした。アメリカの資本はすでにかなりの割合でリビアに入り込んでいるといわれているが、アメリカとの正式な国交再開によって、リビアはこれからさらに急速に国際化を成し遂げていくことになるであろう。
 しかし、リビアは革命以降、長期間、国際的な政治交渉や商習慣から隔離されており、しかも、いまだにカッザーフィー指導者の指揮のもとで独自の政治体制を保持している。ゆたかな天然資源、とくに世界最高品質を誇る石油をもとにして、大幅な経済発展を遂げていき、国民の生活も教育も福祉も向上していくことは、けっしてやさしいことではない。現代の国際社会とうまくつき合っていくためには、解決しなければならない大きな問題が多数、前途に控えている。
 歴史のロマンとノスタルジアがあふれる国には、急激な経済発展が実現されなくても、多くの外国資本が流入してこなくても、砂漠と地中海というゆたかな自然、五つの世界遺産のたたずまい、そして、素朴で穏やかなリビアの人々の恥じらいを含んだ笑顔が曇ることのないような安定した暮らしが保たれることが、私にはなにより大切なことのように思える。

 イスラーム思想、比較宗教学などが専門の私にとって、宗教学の対象というよりも国際政治や経済の対象として注目されるリビアの全体像について調査をしてまとめあげることは、非常に困難な仕事であった。そのうえに、執筆時期はリビアが急激に動く時期にあたり、政治的動向は毎日のように変動するが、リビアでは当局による情報管理が徹底しており、正確な情報を把握することが、きわめて難しい作業となった。
 この私の窮状を救ってくださったのは、在リビア日本国大使館一等書記官として三年間、リビアで活躍した有本武彦氏である。彼は自身が個人的に集めた大切な情報を惜しげもなく私に提供してくださったうえに、本書の原稿を丁寧に読み、誤解や誤記を訂正してくださった。同じ時期にリビアに駐在した夫、塩尻宏も、カッザーフィーの演説文を翻訳したり自分の体験談を提供してくれたりするなど、おおいに助けてくれた。
 この二人の個人的な協力と支援がなければ、本書をこのような形で出版することはまったく不可能であった。ここに有本武彦氏に深甚なる感謝の念を表するとともに、夫、塩尻宏にも謝意を示すことをお許しいただきたい。
 本書は、いわばリビア・トリポリ在住の多くの友人たちの多大な協力と友情の賜物である。感謝をこめて、この本を「リビアの心やさしい人々」に捧げたい。

二〇〇六年六月吉日
東京にて 塩尻和子

内容説明

本書は、文化、歴史、宗教、地理、観光案内だけでなく、国際関係、政治体制、経済、カッザーフィー(カダフィ)の思想、教育、社会、移民問題、人々の日常生活、料理などまで、さまざまな視点からリビアを知ることができるように記述されている。

目次

1 リビアの成り立ち―地理・歴史・民族
2 カッザーフィーとリビアの政治体制
3 国際社会とリビア
4 リビアのかかえる国内・外交問題
5 リビア人の生活と文化
6 天然資源と日本との関係

著者等紹介

塩尻和子[シオジリカズコ]
1944年岡山市生まれ。大阪外国語大学アラビア語学科卒業。京都大学大学院文学研究科修士課程中退。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。文学博士(東京大学)。ハーヴァード大学準研究員、日本大学文理学部非常勤講師などを経て、1999年から筑波大学哲学思想学系助教授。筑波大学大学院人文社会科学研究科(哲学・思想専攻)教授。専攻は宗教学、イスラーム思想、比較思想学、中東地域論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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ドウ

2
10年くらい前のリビアを基準点に、歴史・政治・経済・社会についてあれこれ紹介する本。どうも日本人にカダフィを語らせるとかなり美化される傾向が見えるのが難点だが、リビアで暮らす苦労や、政治的な責任の所在が徹底的に見えなかったリビアの特徴が、言葉の節々から読み取れる。日本はリビアほど言論統制されている訳じゃないのだし、もっと明け透けに書けば良いのに……巻末の年表や演説のスクリプトにも学びがある。2018/11/08

可兒

1
このシリーズ、基本的にその国のよいところだけを選んで紹介しているように思えてならない2009/05/07

南禅寺の小僧

0
今読むとなんとも皮肉な感じになってしまったなあ。あと、カダフィも著者もロマンチストである。2011/04/27

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