インクルージョンをめざす教育―学校と社会の変革を見すえて

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インクルージョンをめざす教育―学校と社会の変革を見すえて

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  • サイズ B6判/ページ数 296p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784750323626
  • NDC分類 378
  • Cコード C0037

出版社内容情報

本格的に導入される「特別支援教育」。通常学級完全ベースで本当に意味でのインクルージョンが実現できるのか。長年の実践をもとに、分けられた場としての養護学級・学校も活用しながら児童生徒の学びの質を確保しようとする、神奈川の先進的取り組みを紹介。

第1章 障害児教育から見る教育課題
 1 「学校不適応」の意味
 2 「社会不適応」が示すもの
 3 「自立活動」から学ぶこと
第2章 障害児教育の夜明け
 1 「遠い夜明け」からの脱却
 2 差別と偏見の背景にあるもの
 3 障害児教育の復権
第3章 インクルージョンをめざす教育
 1 特殊教育から特別支援教育へ
 2 特別支援教育から支援教育へ
 3 障害児教育に学ぶこと
 資料 神奈川の支援教育の概要
第4章 インクルージョンをめざす学校
 1 障害児教育の今日的課題
 2 インクルージョンをめざす学校
第5章 教育改革の切り札としての支援教育
 1 社会改革の視点
 2 学校を変える取組
 3 包み込む社会の実現をめざして
あとがき

あとがき
 すべての学校が、インクルージョンの考え方で子どもたちを指導すれば、きっとすべての子どもたちが楽しい学校生活を送ることができるだろう。そして、大人になった時に、人を差別や偏見の目で見たり、いじめや排除をしないで、みんなで支え合い助けあう社会人に成長するだろう。そんな思いでこの本を書きました。
 今の学校は子どもにとって楽しい場所となっているでしょうか。不登校、いじめ、暴力、学級崩壊、中途退学などの教育課題の深刻さを考えるにつけ、学校生活を楽しめないで、苦しみ悩んでいる子どもたちが大勢いることを知らされます。
 しかも今の子どもたちは、学校での辛さがそのまま一生の辛さに続くものになっていく状況に置かれています。社会に上手く適応できないでいる多くの若者たちがいることが、そのことを示しています。
 私は彼らを見るにつけ、すべての教育課題の中心に、楽しい学校づくりが置かれなければならないと考えています。楽しい学校づくりこそが、何にもまして取り組むべきことではないのかと思います。
 楽しい学校とは、一人ひとりが大切にされていることが実感できる学校です。多くの教師は、一人ひとりを大切にしていると考えています。だが、問われるのは子どもたち自身が大切にされていることを実感しているかということです。
 現在の不登校やいじめ、暴力行為等に示される教育課題は、子どもたちが大切にされていないことを示しているのではないかと思われます。一人ひとりが大切にされるとは、学習面であれ友だち関係であれ、一人ひとりの持っている課題を受け止め支えていくことだと思います。
 一人ひとりの教育的ニーズに合わせた学校づくりが、個々の子どもたちが大切にされていると実感できる学校になります。同時に、教師も支えられる学校のシステムが求められています。
 一人の支援を必要とする子どもへの対応が、周囲の子どもたちを変え、みんなで支え合う学級集団をつくります。このような学級づくりが、子どもたち一人ひとりに学校生活の楽しさを与えます。楽しさはすべての子どもたちを前向きにします。楽しさは生きることへの意欲の源です。そして、それを推進するのがインクルージョンという考え方です。
 私はインクルージョンを根底に置いた教育が、すべての子どもたちに学校の楽しさを教えるものになると思っています。ではインクルージョンとは何でしょうか。
 インクルージョンとは、様々なニーズのある人々と手を取り合って一緒に生きる社会の実現をめざす理念です。インクルージョンの社会とは民族、人種、言語、性別、貧富、障害などの理由で排除や差別をするのではなく、みんなで支えあい助け合う社会のことで、共に生きる社会のことです。
 現在でも、共に生きる社会の実現に向けて、様々な取組がされています。しかし、標語が掲げられること自体、現実の世界はそのような理想からはるかに隔たったところにあることを示しています。
 日本では、インクルージョンの言葉が使用される領域は、主に障害福祉や障害児教育の分野であるように思われます。障害児者の問題が、長く共生社会の中心的課題であったことがその理由であると考えられます。
 すべての子どもたちを祝福し、歓迎し、一人ひとりの必要な支援を適切に行うことが、インクルージョンの教育です。本書はこのようなインクルージョンの教育を進めるに当たって、課題と現状を明らかにしたものです。
 私は、長く障害児教育に携わってきましたが、昨年度から新設養護学校開設準備担当として、新しい養護学校づくりに関わってきました。今年四月に開校する学校の基本的なビジョンを「インクルージョン」に求め、「インクルージョンをめざす学校」として立ち上げることを試みています。
 本書は、「インクルージョンをめざす教育」が、今なぜ望まれているか、その背景には何があるのかを探るものです。
 本書の意図することは次の点にあります。
 一点目は、障害児教育の側から「学校不適応」をどう見るのかということです。不登校、非行、いじめ、学級崩壊、中途退学等の学校生活を充実して過ごせない子どもたちは、ともすると「困った子」「手のかかる子」という捉え方で、子ども自身に問題があると考えられがちです。しかし、「学校不適応」の子どもたちの背景は様々で、LD、AD/HD、軽度の知的障害の二次的障害と見られるケースも多くあります。
 「学校不適応」の子どもたちが、否定的に捉えられ、時には偏見によって排斥されている状況があります。どのような子どもでも、その存在が祝福されたものであり、歓迎されているものであることを、障害児教育の側から訴えることが大切だと思います。
 二点目は、障害児教育の「遠い夜明け」の状況についてです。障害児教育と通常の教育とは、それぞれの領域を固定することによって、両者の間の壁は乗り越えがたいものとなっています。お互いが行き来できる状況になかったことが、結果的に障害児教育の孤立や閉鎖性を生じさせています。
 このことをさらに困難にさせていることに、障害児教育への偏見や軽視という問題があります。いわゆる「指導力不足」の教員を障害児学級や養護学校に配置するなどは、その典型です。障害児教育は、現在もなおインクルードされていないことを指摘しなければなりません。
 そして、障害児教育への偏見や差別の根底にあるものを探り出します。
 三点目は、文部科学省の「特別支援教育」に対して、神奈川県は「支援教育」という考え方を打ち出しました。特別支援教育の枠を越えて、学校生活に困難な課題を持ったすべての子どもたちを対象にする「支援教育」は、これからの教育のあり方を示すものと思われます。私はたまたま草案づくりに関わった者ですが、「支援教育」は障害児教育による教育改革という点で、特別支援教育を大きく越えています。様々なニーズを持った子ども一人ひとりを、障害児教育の理念とノウハウで対応しようとするものです。
 支援教育は、インクルージョンをめざす教育として、今後大きな関心と期待が寄せられるものとなります。
 四点目は、新設養護学校開設準備担当の責任者として、新しい時代のニーズに対応する養護学校のあり方を模索する中で、「インクルージョン」をめざすことの意味、障害児の学校のミッションをあわせて考えるようになったことです。
 障害児の学校は、学校そのものがミッションを持っています。それは地域の様々なニーズのある人々が、排斥されたり偏見の目で見られないで、支え・支えられる地域社会に変革するという使命です。養護学校そのものは、インクルージョンの対極にあり、本来なくすべきものとの考えもありますが、私は地域変革の中心的存在としての役割を持つことを期待しています。特に、人間関係に消極的になりがちな社会にあって、障害児者との関わりが積極的で優しい人間関係を形成していくことへ期待をしています。
 五点目は、私は様々な地域活動に身を置いていますが、そこでの経験がこのような考え方を導き出したと思われます。障害者、在日韓国人、アルコール依存症の者、犯罪の更生者、そして路上生活者等、生活上また、精神的なニーズのある多くの人々との関わりの中で生きてきました。このような取組が、地域住民の意識を変え、「共に生きる地域社会」を作り出すものとなっています。どのような人もはじき出さない「共生社会」は、インクルージョンのあり方を示すものと考えられます。
 六点目は、私が中学校の教師であった時に、「学校不適応指導学級」をつくって、様々なニーズのある子どもたちを指導してきた経緯があります。障害児教育の理念とノウハウは、通常の教育を変革するものという確信を持っています。
 望ましい社会のあり方を根底に据えた「インクルージョン」の教育は、今後すべての学校で取り組まれることになることを信じています。その教育を受けた子どもたちが、社会の改革をめざすことを期待するものです。

二〇〇六年二月四日
鈴木文治

目次

第1章 障害児教育から見る教育課題(「学校不適応」の意味;「社会不適応」が示すもの;「自立活動」から学ぶこと)
第2章 障害児教育の夜明け(「遠い夜明け」からの脱却;差別と偏見の背景にあるもの;障害児教育の復権)
第3章 インクルージョンをめざす教育(特殊教育から特別支援教育へ;特別支援教育から支援教育へ;障害児教育に学ぶこと)
第4章 インクルージョンをめざす学校(障害児教育の今日的課題;インクルージョンをめざす学校)
第5章 教育改革の切り札としての支援教育(社会改革の視点;学校を変える取組;包み込む社会の実現をめざして)

著者等紹介

鈴木文治[スズキフミハル]
1948年長野県飯田市生まれ。中央大学法学部法律学科、立教大学文学部キリスト教学科卒業。川崎市立中学校教諭、神奈川県立第二教育センター研修指導主事・研究室長、県立鶴見養護学校教頭、県教育委員会障害児教育課課長代理、県立平塚盲学校校長、県教育委員会子ども教育支援課専任主幹(川崎北部方面養護学校開設準備担当)を経て、県立麻生養護学校校長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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Yuka

2
会社で障がい者部会に所属することになったので、院生時代の記憶を呼び起こすために再学習。 2006年に書かれたものだから今はもう少し変わっていると思うけれど神奈川県の「支援教育」やインクルージョンを目指していくためにあるべき教育像などをイメージすることができた。今後は雇用に関する部分がフィールドになるだろうけど、対象者には特別支援教育を受けた人達もいるだろうし、教育現場での実践の延長線を意識することで見えてくる部分もあるだろうなと思うのでちょこちょこ学び直しをしていこうと思う💡2023/05/21

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