出版社内容情報
OECD諸国の医療を取り巻く状況を国際的に比較・評価するデータ集。最新のインディケータを国際比較が可能な形で提示。健康状態、保健医療資源とその利用、保健医療支出と資金供給、健康の非医学的決定要因、人口統計的・経済的背景の主要5分野。
利用案内
概要
第1部 健康状態
1.平均寿命
2.65歳時平均余命
3.死亡、全死因と主な死因
4.循環器疾患、死亡
5.がん、死亡
6.死亡の外因
7.乳児死亡
8.乳児保健:低出生体重
9.子どもの歯科保健
第2部 保健医療資源とその利用
1.診療医師
2.就業看護師
3.保健医療専門家(医師と看護師)の報酬
4.急性期治療病床、利用可能性と利用率
5.医療技術
6.受診回数
7.子どもの予防接種
8.高齢者のインフルエンザ予防接種
9.退院患者
10.平均在院日数
11.心臓血管手術
12.帝王切開
13.白内障手術、外来と入院
第3部 保健医療支出と資金供給
1.1人あたり保健医療支出
2.1人あたり保健医療支出、伸びの推移
3.保健医療支出の国内総生産(GDP)との関係
4.機能別保健医療支出
5.医薬品支出
6.保健医療の財源
第4部 健康の非医学的決定要因
1.たばこ消費
2.アルコール消費
3.食物消費
4.太りすぎと肥満
第5部 人口統計的、経済的背景
1.総人口と人口構造
2.出生率
3.国内総生産(GDP)と所得格差
参考文献
別添A 別添表
別添B データの比較可能性に関する保健医療支出の定義と方法の注釈
別添C OECD Health Data 2005の中の変数リスト
別添D 疾病及び傷害分類とICDコード
訳者あとがき
概要
OECD加盟国では、保健医療制度の規模が拡大し重要性が増している。保健医療の進歩と新薬の開発は、OECD加盟国がここ数十年に享受した健康状態の安定した改善に寄与した。しかし同時に、保健医療支出の国民所得に占める割合は絶えず上昇し、保健医療支出はこれまでにないほど増加した。
健康であるための要因として、保健医療や保健医療支出を上回るものがあることは明白である。多くの証拠により、先進諸国の国民の健康が、保健医療の提供自体によるよりも社会経済的要因や、生活様式により決定されることがわかる。適切に計画された公衆衛生プログラムは疾病の予防に寄与し、保健医療制度への費用圧力のいくつかを取り除くことに役立つといってもよい。健康に対する危険要因もまた変化している。例えば、多くのOECD加盟国が過去数十年にわたりたばこ消費を減らすことに著しい進歩を遂げた一方、食習慣の変化とさらに座りがちの生活様式を反映して、肥満率は全てのOECD加盟国で増加した。
「図表でみる世界の保健医療――OECDインディケータ(2005年版)」は、保健医療制度の運用の様々な側面に関する指標の、比較可能な最新の収集資料を提供する。それは「OECDヘルスデータ2005」(OECD加盟国の健康と保健医療制度に関する1000を超える一連の統計を含んでいる総合的なデータベース)をその基礎としている。この「図表でみる世界の保健医療」の第3版は、保健医療制度の資源と活動について焦点を当てるばかりでなく、健康促進と疾病予防に関する指標を増やして掲載している。例えば、健康状態についての章には、歯科保健を含む子どもの健康に関するより多くの情報を含んでいる。危険要因についての章にもたばこ消費、アルコール消費、太りすぎと肥満の指標に加え、栄養に関する指標が追加された。高齢者のインフルエンザの予防接種率は、不健康とそれに伴う保健医療の必要性を減らすことができる予防保健サービスの例として、従来からある子どもの予防接種に関する指標の他に加えられた。保健医療支出は今では、OECD各加盟国の組織化された公衆衛生プログラムのための支出を示すために、細かく分類されている。
本書は、健康状態、健康リスク、そして保健医療制度の費用、資源の配分、成果の指標について、30のOECD加盟国間に大きな違いがあるという際だった証拠を提供する。多くの指標に基本人口の性別、年齢別の内訳が示されているが、ほとんどの場合(国内の)地域別、社会経済集団別、或いは人種/民族別にさらに細かくしたものを示していない。従って読者は、本書に示されている多くの指標について、国際間にあるのと同様に国内にも多くの違いがあるかもしれないことを心に留めておくべきである。
以下は、保健医療制度の運用に関連する本書の主な結果のいくつかを要約したものである。
OECD加盟国では健康状態が劇的に改善
* 保健医療を受けやすくなり、薬の効能がよくなったことに加え、生活水準の向上、生活様式の改善、及び教育の向上のおかげで、OECD加盟国では、ここ数十年で平均寿命が大きく伸びた。OECD加盟国の平均では、平均寿命は2003年で77.8歳に達し、1960年の68.5歳から上昇した。2003年では、日本は最も長い平均寿命を享受し、男女全体で81.8歳であり、次にアイスランド、スペイン、スイス、オーストラリア及びスウェーデンが続く。
* 各国間や年次間での平均寿命の違いに影響するかもしれない多くの非医学的及び医学的要因の相対的な寄与を推計することは困難である。OECD加盟国間では、国民所得のより高い国が概してより長い平均寿命になっているが、もっともその関係は国民所得の高い水準の国々の間ではあまり断言できない。1人あたり所得が同様なOECD加盟国の間でも、平均寿命の顕著な違いがある。例えば、日本とスペインはそれぞれの1人あたりGDPだけで予測されるよりも長い平均寿命であるが、一方アメリカとハンガリーは所得に基づいて予測したより短い平均寿命である。
OECD加盟国は保健医療支出の増加に直面
* OECD加盟国の過去数十年にわたる長寿の印象的な獲得があった一方、保健医療支出も長年上昇し、ほとんどの国において保健医療支出が経済全体の伸びよりも高い率で増加した。2003年では、OECD加盟国は、平均でGDPの8.8%を保健医療支出に使用し、1990年での7.1%や1970年での5%をわずかに超える率から上昇した。しかし、保健医療支出に当てられるGDPの割合は、国により非常に異なっており、アメリカの15%からスロバキアと韓国の6%未満までの幅がある。アメリカの次に2003年のGDPに占める保健医療支出の割合が高いのはスイスとドイツであり、それぞれGDPの11.5%と11.1%を保健医療に支出した。
* 保健医療支出の伸びはいくつかの要因の結果であるといえる。一般的に、1人あたりGDPがより高いOECD加盟国は1人あたり保健医療により多く支出する傾向にある。しかし、国によって大きな違いがあり、それは一部には、適切な支出水準に関する政策決定、保健医療制度の財政と組織構造の違い、及び他の財やサービスと比較して保健医療への追加支出の価値が認められているかどうかを反映しているのかもしれない。予防、診断及び健康状態の治療を行うための医療の能力の進歩は、保健医療費用を上昇させる主な要因である。新しい機器、治療或いは薬に資金を供給する方法についての意思決定過程を含む様々な要因が、新しい医療技術と新しい薬の開発と普及に影響する。人口の高齢化も保健医療支出の増加の一因となる。65歳以上の人口の割合は全てのOECD加盟国で上昇し、特に(2010年以降65歳に達し始める)“ベビーブーム”世代の高齢化を考慮すれば、これは数年先、数十年先まで続くことが予想される。より高齢の人口はより多くの保健医療と長期ケアを必要とする傾向があり、人口の高齢化がこの分野の公的支出を増加させることが予測できる。
保健医療費用が公的予算を圧迫
* ほとんどのOECD加盟国で、公的負担の医療保険の適用或いは医療の直接公的負担が広く行われていることを考慮すれば、アメリカ、メキシコ及び韓国を除く全ての国で、公的部門が保健医療支出の最も大きい部分の財源である。民間部門が保健医療支出において特に大きな役割を果たすアメリカにおいてさえ、保健医療に対する公的支出はOECD平均に匹敵するGDPの6.6%を示す。
* OECD加盟国において、最近の10年は公的保健医療支出の伸びの点で、大きく2つの期間に分けられる。1992-1997年の期間では、公的保健医療支出の伸びは経済成長と同様か或いは経済成長より低くさえあった。しかしさらに近年では、全てのOECD加盟国で、公的保健医療支出は経済成長より急速に増加した。イギリスやカナダのようないくつかの国での、公的保健医療支出の最近の増加は、1990年代半ばの保健医療費抑制に起因する需要圧力を軽減するための計画的な政策を反映したものである。
保健医療資源の不足が一定の国々で問題化の可能性
* 医師の不足が認められることは多くの国の重大な懸念である。診療医師の数、分布及び構成は、医業への参入規制、専門分野の選択、報酬その他の労働条件の側面、及び移住などの多くの要因に影響される。2003年では、OECD加盟国間で1人あたり診療医師数に大きな違いがある。これはイタリアとギリシャの人口1000人あたり4人を超える高いものから、トルコ、メキシコ及び韓国の人口1000人あたり2人未満の低いものまで幅がある。1人あたり診療医師数はまた日本、カナダ、イギリス及びニュージーランドでも比較的低い。後者の国々は伝統的に医科大学の入学数を規制している。
* 外国で養成された医師は、一定の国では医師の労働力の大きな部分の源泉である。2000年では、ニュージーランド、イギリス、アメリカ及びカナダのような英語圏の国では、外国で養成された医師数の割合は、全ての診療医師の20%を超える。他方、日本、オーストリア及びフランスでは外国で養成された医師の割合がはるかに低い。国際移動は、受け入れ国では医師とその他の保健医療専門家の労働市場の柔軟性を増すことができるが、より低所得の国からより高所得の国に長期の実質流入がある場合には、“頭脳流出”についての深刻な懸念が生じる。
健康の危険要因が変化
* たばこ消費は依然として早すぎる死亡の主な要因ではあるけれども、多くのOECD加盟国は、たばこ消費の減少において過去20年にわたり著しい進歩を遂げた。この減少の多くは、国民の意識向上キャンペーン、広告禁止及び増税を通した、たばこ消費の減少を目的とした政策によるものである。オーストラリア、カナダ、スウェーデン及びアメリカでは、成人の日常喫煙者率は1970年代末期の33%を超えた率から低下し、現在では20%未満である。対極には、ギリシャ、ハンガリー及びルクセンブルクの成人の33%を超える者が日常的に喫煙を続けている。
* 成人1人あたり平均アルコール消費量も、多くのOECD加盟国で過去20年にわたり徐々に低下した。広告規制、販売制限及び課税は全て、アルコール消費を減らす効果的な手段であると証明された。イタリアやフランスのような伝統的なワイン生産国では、1980年以降1人あたりアルコール消費量が大幅に減少した。他方、アイルランドでは、1人あたりアルコール消費量が40%を超えて増加した。
内容説明
本書は主要な保健医療指標を文、グラフ及び表の形で提供するものである。健康状態、保健医療制度及び健康の非医学的決定要因の中心指標について各国間の違いと年次推移を、人口統計的及び経済的状況に関する背景情報と共に示すものである。またこれらのデータの短い解釈も提供する。本書末の統計の別添はこれらの指標の追加のデータを提供するものである。
目次
第1部 健康状態(平均寿命;65歳時平均余命 ほか)
第2部 保健医療資源とその利用(診療医師;就業看護師 ほか)
第3部 保健医療支出と資金供給(1人あたり保健医療支出;1人あたり保健医療支出、伸びの推移 ほか)
第4部 健康の非医学的決定要因(たばこ消費;アルコール消費;食物消費;太りすぎと肥満)
第5部 人口統計的、経済的背景(総人口と人口構造;出生率;国内総生産(GDP)と所得格差)
著者等紹介
鐘ヶ江葉子[カネガエヨウコ]
愛媛県生まれ。京都大学経済学部卒業。厚生労働省勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。