出版社内容情報
関西の主要な170のNPO/NGO団体が加盟している関西国際交流団体協議会は創立20周年を迎えた。この20年間で、NPO/NGOが担う役割はあらゆる分野で大きなものとなった。当協議会の軌跡を振り返りつ、今後のNPO/NGOのあり方を提言する。
ご挨拶
関西国際交流団体協議会理事長(桝居伸子)
第一章 フロンティアたちの挑戦
(岩村 昇)
道を拓き、人を育てた医師――その生き方に魅せられた人々
(草地賢一)
言われてもやらない、言われなくてもする――神戸から世界へ、草の根の人々と共に生きて
(坂口勝春)
アジア理解の架け橋に――図書館づくりにかけた夢
(竹川英幸)
帰りたい、望郷の哀しみを訴え続けて――中国残留孤児問題の解決に奔走
(朴 正恵)
すべての子どもが自分らしく生きるために――民族学級の制度保障に賭けた半生
(播磨靖夫)
障がいを文化に、自立と芸術――アジアとつなぐ奈良からの挑戦
(飛田雄一)
黙っていては何も進まない――在日外国人の人権を護る
(平田 哲)
アジアの貧困からの解放をめざして――NGOと労働組合をつなぐ
(古市 実)
留学生は日本と世界の架け橋――財界主導で取り組んだ留学生支援
(降旗高司郎)
成熟した市民社会をめざして――NPO・行政・企業連携のパイプ役
(豊後レイコ)
熟年よ、世界へはばたけ! 地球がキャンパスだ――日本のエルダーホステル創始者
(村上公彦)
世のため、人のために、理屈を超えて――アジアに井戸を贈って四半世紀
(尹 基)
悲劇を放っておけない――キムチが食べられる老人ホームづくり
(米田伸次)
地域に「平和の文化」を築くこと――国際理解教育を問い続けて
第二章 関西の軌跡
関西における「市民、人権、教育、国際」諸活動の軌跡
国際交流――関西が育んだ交流の歴史と展望
国際協力――社会正義の実現をめざす関西NGO
国際理解教育――関西発、国際理解教育の創造と実践
人 権――国際人権と関西の取り組み
在 日――関西における在日コリアン市民運動の軌跡
市民活動――在野精神、自立自助の伝統から公益的活動へ
女性たちの歩み――問題意識をつむいで社会を変える行動へ
第三章 次世代の進む道
国際社会と日本のNPO(山本 正)
NPOに期待する~組織に必要な志と能力(山岡義典)
座談会「次世代のNPO像を考える~人と組織と社会のゆくえ」
第四章 関西国際交流団体協議会の二〇年の軌跡
一、日本初のネットワーク組織の誕生
二、特徴的な活動にみる協議会の果たしてきた役割
三、これから求められるネットワーク
第五章 資料編
NPO/NGO 活動の歴史
関西の国際交流・協力団体の分析、推移
歴代役員
ご協力団体・企業一覧
編集委員会・執筆者紹介
ご挨拶(特定非営利活動法人 関西国際交流団体協議会理事長 桝居伸子)
関西国際交流団体協議会が結成されてから二〇年が経ちました。二二団体で発起し、当初七二団体で構成されていた本協議会も、二〇〇六年現在では、関西の主要で多様な一七〇団体が加盟する連合体となりました。
この間、国際社会においては、東西間の政治・イデオロギーの対立に終止符が打たれたものの、民族紛争は逆に激化し、戦火の絶えない時代が続いてきました。二一世紀に入ると、さらにテロが人々を脅かすようになり、IT技術の発展とグローバル化により、世界の市場化や労働移動が一層進み、経済格差、環境破壊、感染症、難民、人権抑圧などの課題も深刻化してきました。国内では、在日コリアン、外国人留学生の他、インドシナ難民受け入れに始まる新しい外国人との接触が増え、バブル経済とグローバル化を背景にした在住外国人の増加に伴い、日本社会は多民族化傾向が高まりつつあります。また、阪神・淡路大震災などの災害も多くありました。まさに、この二〇年は激動の時代でした。
関西国際交流団体協議会では、創立二〇周年記念事業として、関西の国際交流・国際協力活動の歩みを記録し、将来に伝えることとしました。
この二〇年間は、日本の国際交流・国際協力活動が大きく発展・変遷した時代です。国際交流・国際協力がある種の層に限られていた時代から、関わる人がきわめて多様化してきました。また、市民公益活動という新しい社会的領域の存在とその担い手であるNPOが注目されるようになり、行政や企業の協働のパートナーとして、役割への期待が高まるようになりました。社会の公正かつ民主的な運営をめざし、平和、人権、開発、環境のあらゆる分野において、NPO/NGOが大きな役割を担うようになってきたのです。
特に、関西における活動は、関西の豊かな歴史、文化、風土、産業などを背景として生まれたものが多く、東京や他の地方とは異なる様相もたくさんあります。関西の活動の歩みをまとめて記録することは、関西の特徴、独自性を明確にするとともに、ひいては、日本の国際交流・国際協力活動の変遷を記録することにつながるものと思われます。
個々の団体や個人、あるいは分野、イシューにおいてはさまざまな出版が行われていますが、関西全体を二〇年という年月でまとめ、俯瞰する記録はありませんでした。そこで、民間主導、人権教育、アジアとの距離の近さ、在日の存在、震災の経験といった関西の特徴を優位性として取り組まれてきた市民活動の軌跡をまとめることにしました。
また、団体の創設者たちは、社会状況が厳しい中で、信念に基づいた独自の活動を生み出し、実践し、発展させてこられました。しかし、その多くの方は高齢化されていることから、今のうちに記録にとどめ、次世代に広く語り継ぐことが必要となっていました。先輩たちがどのような思いで活動してこられたのかを知ること、志向されてきたのかに思いを馳せることは、今後への鍵を発見することにもなります。
六〇年代のまだ国際交流も国際協力も少ない時代に、井戸を堀り、種をまき、畑を耕してきたフロンティアたちの生きざま。中国帰国者、在日コリアン、外国人留学生、障がい者などの人権問題に献身された人々の貴重な証言。どのインタビューをとっても、それぞれの方が、置かれた立場を生かしながら心の通った深い関わりを持ってこられたこと、使命感(ミッション)を持って活動してこられたことに深い感銘を受けました。創設者たちの熱い思いや苦労、挑戦を次世代の大きな力にしていくための営みにしたいと思います。
さらに、国際交流・国際協力団体を支援する日本で最初の連合体としての関西国際交流団体協議会の設立経緯や主要な取り組みもまとめました。ネットワークの重要性をいち早く認識して結成し、連合体ならではの事業に取り組んでいる本協議会の実践は、他地域でも範にしていただけると思っております。
今回取り上げたのはほんの一部で、まだまだたくさんある関西の活動や人物をご紹介できなかったことは残念ですが、この記録は、関西の独自性、地域性を生かした活動を広く社会に紹介するとともに、次世代の発展のために参考になるものと思っております。取材・編集にご協力いただいた団体の皆さま、出版にご支援をいただいた団体や企業の皆さまに心からお礼を申し上げます。
年々深刻化する課題を抱える国際社会、地域社会において、今ほど、国際交流・国際協力活動が重要なときはありません。また、成熟した市民社会の形成に向けて、「民」の役割が高まっています。私たちの活動がますます充実したものとなるよう願ってやみません。
目次
第1章 フロンティアたちの挑戦(岩村昇 道を拓き、人を育てた医師―その生き方に魅せられた人々;草地賢一 言われてもやらない、言われなくてもする―神戸から世界へ、草の根の人々と共に生きて ほか)
第2章 関西の軌跡(関西における「市民、人権、教育、国際」諸活動の軌跡;国際交流―関西が育んだ交流の歴史と展望 ほか)
第3章 次世代の進む道(国際社会と日本のNPO;NPOに期待する―組織に必要な志と能力 ほか)
第4章 関西国際交流団体協議会の二〇年の軌跡(日本初のネットワーク組織の誕生;特徴的な活動にみる協議会の果たしてきた役割 ほか)
第5章 資料編(NPO/NGO活動の歴史;関西の国際交流・協力団体の分析、推移 ほか)