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出版社内容情報
子どもと弁護士がつくるお芝居「もがれた翼」は夢をつむぎ、傷ついた子どもの避難場所「カリヨン子どもの家」を実現した。その感動の記録であるとともに、子どもとおとなのパートナーシップや子どもの人権について若者たちとともに学ぶテキストとしても最適。
1章 傷ついた思春期の子どもたち[坪井節子]
1 傷ついた子どもたちといっしょに歩いていこう
2 行き場を失った思春期の子どもたち
3 傷ついた子どもが安心して寝泊まりできる居場所を
4 海外の総合的子ども支援のとりくみに学ぶ
2章 カリヨン子どもセンターの誕生[坪井節子]
1 子どもたちと弁護士がつくるお芝居「もがれた翼」
2 夢をつむぐお芝居が現実を動かす
3 お芝居から生まれた子どもシェルター・カリヨン子どもの家
4 一人ひとりの歩みに寄り添うカリヨン子どもの家
5 ほんとうに子どもが参加するお芝居づくりへ
3章 いっしょに考えよう 子どもの権利
1 「子どもの人権」ってなに?[坪井節子]
2 警察につかまっちゃった…(少年事件)[馬渕泰至]
3 無断外泊で退学?!(学校問題)[西田美樹・武藤 暁]
4 これってギャクタイ?!(親子関係)[掛川亜季]
4章 子どもとおとなの共同の芝居づくり[久保田邦明]
1 弁護士さんたちと私たち高校演劇部との出会い
2 ふれあいと演劇的学びの場ワークショップ
3 子どもとおとなの関係はどう変わったか
4 もがれた翼「パート12」が生まれる舞台裏
5 高校演劇と「もがれた翼」、これまで・これから
5章 もがれた翼パート12「ひとりぼっち」稽古場日記[坪井花梨]
稽古場インタビュー 1[徳生 葵・徳生 舞]
稽古場インタビュー 2[村田綾香・高橋朋子]
稽古場インタビュー 3[冨沢竜也]
6章 子どもとおとなのパートナーシップ[坪井節子]
1 子どもとおとなが対等に生きるお芝居「もがれた翼」
2 改めて子どもの人権を考える
3 憲法と同じ価値・子どもの人権保障の法的根拠、子どもの権利条約
4 おとなも子どもも変えることが必要な子どもの人権への考え方
5 子どもとおとなの対等かつ全面的なパートナーシップ、リヤドガイドライン
6 対等なパートナーシップを生み出した芝居づくり
7 自立援助ホームの実現とカリヨン子どもセンターのこれから
7章 子どもたちと弁護士がつくるお芝居「もがれた翼」メモリー
あとがき[三坂彰彦]
●紹介 子どもの人権110番
カリヨン子どもセンター
東京弁護士会
あとがき
子どもの権利 もがれた翼 そして、子どもシェルター
「弁護士」というと、むずかしいことばが並んだ「法律」を頭につめ込んで、よくわからないことをぺらぺらしゃべる人たちというイメージがあるかもしれません。また最近は弁護士がテレビに登場することが増えたので、弁護士って変わり者も多いけど、けっこうふつうの人間だなと思っている人もいるかもしれません。でも、子どもの問題にとりくんでいる弁護士がいることは知らない人も多いのではないでしょうか。
東京弁護士会というのは、弁護士でつくっている集まりですが、そこには子どもの問題に関心をもっている弁護士有志でつくる「子どもの人権委員会」(ほんとうは、「子どもの人権と少年法に関する特別委員会」と言います、長いですね)という委員会があります。
この委員会が、「子どもの人権110番」という電話相談の活動を始めたのは(本文でも紹介しているように)今から20年以上前の1985年のことでした。当時まだ、「子どもにも権利がある」と本気で思っている人は少なく、弁護士たちもほんとうに電話で子どもの相談がくるのか半信半疑でした。しかし、「子どもの人権110番」を始めて見ると、びっくりするくらい多くの電話がかかってきて、いじめや先生からの体罰など深刻な相談が多く寄せられました。私たち弁護士は、日本の社会で子どもの権利がいかに守られていないかを痛感したのです。
それから20年以上が経ちました。
私たちは、この間「子どもの人権110番」での子どもや親からの相談を受ける活動、問題を起こしてしまった子どもの付添人となって子どもの立ち直りをサポートする活動、学校での体罰やいじめなどで苦しんでいる子どもの代理人としての活動や親からの虐待を受けている子どもを守る活動など、子どもの権利を守る活動を続けてきました。
そのなかで子どもたちに起きている問題と子どもたちの権利を守るための弁護士のとりくみを広く知ってもらいたいと考え、本文で紹介しているように、1994年からは弁護士たちと子どもたちとでとりくむお芝居「もがれた翼」を毎年上演してきました。
あるとき、こんな場所があったら…という思いから、お芝居「もがれた翼」のなかで、行き場のない子どものためのシェルター(避難場所)を登場させました。もちろん、実際には存在しない架空のものです。
ところが、これが大きな反響を呼び、2004年には、子どものシェルターが「カリヨン子どもの家」として実現することになったのです。その後約2年のあいだに、子どものシェルターには50名近くの子どもたちが入居しては新しい居場所へと出発していくまでになっています。
2005年には、それまでの劇へのとりくみを一歩進め、子どもたちと弁護士がいっしょに発声などお芝居の基礎にとりくむとともに、「もがれた翼」のテーマである子どもの権利について考えようと、「もがれた翼ワークショップ」を試み、貴重な経験をすることができました。
この本は、こうした私たちの子どもの問題へのとりくみから生まれてきた「もがれた翼」、子どものシェルター「カリヨン子どもの家」、そしてワークショップなどの一部始終を紹介しようとしたものです。
この20年のあいだに、地球規模でも、子どもの権利条約が成立し、1994年には日本政府もこの条約を守りますと約束(批准)するなど、子どもにもさまざまな権利があるのだという意識は広がってきていて、子どもは単に守られるべき存在というだけでなく、子どもには権利があって、同じ社会をともに生きるおとなと対等のパートナーなのだということがはっきり意識されるようになりました。
しかし、20年以上が経った今も、学校での体罰やいじめ、家庭での虐待などの問題がなくなる気配はなく、子どもの権利が十分に守られない状態は続いています。子どもの権利条約などによって認められた権利が実際には保障されず、多くの子どもたちが今もたいへんな思いで生きていたり、「とりあえずは不自由ないように思えるのに息苦しい」という思いで生活していたりすることを私たちは知っています。
この本を読んでくれたあなたが子どもで、今たいへんな思いや息苦しい思いをしているのだとしたら、ぜひ、「子どもの人権110番」(電話03―3503―0110)に相談してみてください。また、あなた自身でなくとも、身のまわりにそのようなたいへんな思いをしている子どもがいると思い当たるのなら、やはり、友だちや家族や知り合いという立場でこの「子どもの人権110番」に電話をしてみてください。
それから、私たちの「もがれた翼」のとりくみや、子どものシェルター「カリヨン子どもの家」に関心をおもちになった方も、ぜひ、東京弁護士会までご連絡をお願いします。
この本を通じて、子どもの権利を守る活動に向けた私たちのとりくみをひとりでも多くの人に知っていただくとともに、現実に今たいへんな思いをしながら生きている子どもたちの力に少しでもなれたらと私たちは願っています。
2006年5月
東京弁護士会・子どもの人権と少年法に関する特別委員会委員長 三坂彰彦
目次
1章 傷ついた思春期の子どもたち
2章 カリヨン子どもセンターの誕生
3章 いっしょに考えよう子どもの権利
4章 子どもとおとなの共同の芝居づくり
5章 もがれた翼パート12「ひとりぼっち」稽古場日記
6章 子どもとおとなのパートナーシップ
7章 子どもたちと弁護士がつくるお芝居「もがれた翼」メモリー
著者等紹介
坪井節子[ツボイセツコ]
1953年生まれ。弁護士。坪井法律事務所。1987年より東京弁護士会子どもの人権救済センター等において、少年事件の付添人活動や学校・家庭・福祉の現場での子どもの人権救済活動にたずさわる。学生時代の演劇部活動の経験を生かし、1994年より、子どもと弁護士がつくるお芝居「もがれた翼」にとりくむ。現在、東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会委員、カリヨン子どもセンター理事長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。