環境と資源利用の人類学―西太平洋諸島の生活と文化

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環境と資源利用の人類学―西太平洋諸島の生活と文化

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  • サイズ A5判/ページ数 327p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784750323060
  • NDC分類 382.7
  • Cコード C0039

出版社内容情報

資源研究の舞台装置として西部太平洋の島嶼環境を選択し、物的・知的・人的資源、生態・象徴資源など、さまざまな資源概念について各分野の研究者が言及する。人間集団による資源利用の多様性について考察し、新たな視点から「資源」とは何かを探る資源論。

はじめに
第1部 生態人類学的視点
 第1章 トロカス・コネクション(秋道智彌)
     ──西部太平洋におけるサンゴ礁資源管理の生態史
 第2章 サンゴ礁の人と魚(須田一弘)
     ──オセアニアの海産資源とその利用
 第3章 環礁生態系における植物利用システムの再編成(風間計博)
     ──サンゴ島の生業経済と換金作物栽培
 第4章 生業活動と象徴行為の交わり(野林厚志)
     ──台湾タオの漁撈活動
 第5章 変わる“生計活動”と変わらぬ“資源利用”(小野林太郎)
     ──東南アジアの“漂海民”の場合
第2部 考古学的視点
 第6章 島嶼世界の土器作り(印東道子)
     ──資源の偏りと技術変化
 第7章 狩猟採集民の島環境適応への挑戦(高宮広土)
     ──先史沖縄諸島の生業
 第8章 大貝塚を作った人々(小川英文)
     ──ルソン島ラロ貝塚群
 第9章 遺跡から見た海洋資源の利用(片岡 修)
     ──ポーンペイ島ナン・マドール遺跡の場合
第3部 文化人類学的視点
 第10章 越境する人の動き(須藤健一)
     ──人的資源の活用
 第11章 島嶼間交易における集権化と分権化(柄木田康之)
     ──サウェイ交易をめぐる論争
 第12章 資源をめぐる視線(遠藤 央)
     ──パラオの内と外
 第13章 “伝統”工芸の資源化(大西秀之)
     ──商品化されるルソン島北部山地民の機織り
 第14章 太陽と砂浜と海、そして楽園(石森秀三)
     ──南太平洋における島嶼観光の光と影
あとがき
索 引

はじめに
 「資源」とは何か。このなじみある言葉がどれほど奥深いものかは、この問いかけをじっくり考えてみたときに認識される。「資源とはなんぞや」と、68人もの人類学者に問いかけた結果が1冊にまとめられたものを見ると(内堀 2005)、実に多様な厚みのある「資源論」が展開されている。どれをとっても同じものはなく、物的資源、生態資源、知的・人的資源、象徴資源など、さまざまな種類の資源概念が語られている。
 自然界に存在する物質が資源として認識されるには、それに対する価値づけがまず不可欠である。特に、環境のもたらす種々の条件が、資源認識に大きな影響を及ぼす。たとえば、食料資源が豊富な環境においては見向きもされないある植物が、ごく限られた食料資源しか入手できない過酷な環境下においては大切な資源として認識されたり、土器作りに不可欠な粘土も、土器を作らない集団にとっては利用価値のない単なる土にすぎない。資源の価値づけをするのは人間であるが、それが個人レベルから社会・文化レベルまで、どこでなされるか、そして、どのような環境条件において判断されるかによって、その対象や価値が変わる。
 本書では、島嶼環境を資源研究の舞台装置として選択した。島は周囲を海で囲まれることでその境界が区切られるので、その空間的広がりを明確にできる。また、面積が比較的小さく、資源分布や環境条件も単純である場合が多い。島の地質構造に由来する資源の有無や偏在性も明確である。
 島嶼間に見られる自然環境の多様性は、植物学や動物学のみならず、人類学にとっても有用な研究環境を提供している。限られた一定の空間を利用することで、さまざまな文化的行為の解読が効果的に行われるので、「島は天然の実験室である」と多くの人類学者に指摘されてきた(Goodenough 1957; Sahlins 1963; Kirch 1980; 印東 1997など)。

 本書を構成する論文は、西部太平洋の島々を舞台に繰り広げられた、人間集団による資源利用の多様性について考察したものである。オセアニアは多数の島嶼から成り立つ地域である。そこに住む人間集団がとってきた居住戦略は、個々の自然環境および利用できる生態資源の質や量と密接な関わりを持っている。「島」と一口にいっても、大陸から遠く離れた辺境にある孤島もあれば、日本のように大陸並に資源の豊富な島もある。西部太平洋地域には火山島およびサンゴ島が混在し、個々の島が持つ自然資源の多様性はきわめて大きい。東南アジア島嶼部の比較的大きな島では、島であっても島に住んでいるという意識がそれほど強く感じられない場合もあるのに対し、ミクロネシアのサンゴ島のように、生存をかけたぎりぎりの工夫をしながら居住を続けている例もある。
 特にサンゴ島は、海抜数メートルという地形的特徴をはじめ、干ばつや津波・高波など、多様な自然災害を受けやすい。また、鉱物資源がサンゴ石灰岩に限定されるため、生育可能な植物数は限定される。それに対処するため、驚異的な労力を使って植物を栽培することで資源を最大限に利用したり、資源獲得の可能性を求めて他島との接触を定期的に保つなどしてきた。入手の困難な物質には多大な価値が付加され、近隣の火山島から持ち込まれることになる。
 このような自然環境の相違を背景にして、北西太平洋地域のサンゴ島と火山島居住民との間では、島嶼間交易が伝統的に行われてきた。最もよく例に取り上げられるのは、ミクロネシアのヤップ島とその東に広がる中央カロリン諸島との間で行われてきたサウェイ交易である。これに関しては多くの先行研究があり、政治的・経済的・宗教的な交易体系であることが主として指摘されてきた(本書第11章参照)。また、その背景には、貧困な資源環境の居住民側からの資源獲得行為が当初から存在していたことも指摘されている(Intoh 2003)。
 この島嶼間交易が、資源に乏しいサンゴ島居住民の居住戦略の一つであることは間違いないが、このように大がかりな交易体系が発展した背景には、居住する島嶼環境の個別性も深く関与していた。たとえば、同じサンゴ島という自然環境のもとに居住しているマーシャル諸島の人々は、火山島との交易は行わず、南北に広く散在するサンゴ島間での交換体系を築いていた。鉱物資源を除いた食料資源と象徴資源との相互補完関係が成立していたことになる(Alkire 1978)。
 本書は、ミクロネシアを主要研究対象にしてはいるが、あえて西部太平洋地域全体を視野に入れ、フィリピンや台湾、そして沖縄をもその研究対象に含めることで、熱帯島嶼環境における資源利用の特徴を明らかにし、島に対する認識の多様性を探ろうとしたものである。執筆した14人の研究者が持つ問題意識は多岐にわたるが、島嶼環境と資源利用という言葉をキーワードとし、生態人類学的、考古学的、そして文化人類学的な観点から島嶼居住民の多様な資源観を分析している。
 島嶼環境に特徴的な資源といえば海洋資源である。貝の利用は古くから行われ(第8、9章)、魚は現在でも重要な生きる糧を提供している(第2、4、5章)。海に囲まれた島ならではの豊かな海洋資源の利用に対し、伝統的にその利用を規制し管理していた様子からは、人々の資源に対する現実的な認識がうかがえる。豊かさは保護すべき対象として認識されてきたのである(第1章)。
 他方、資源が非常に限られた自然環境にある場合、交易によって資源を導入したり、文化伝統の廃止(ポリネシアにおける土器文化の脱落)という選択肢もありえる。しかし、あくまでもその限られた陸上資源を利用するため、尋常ではないエネルギーが投入されてきた場合もある(第3、6章)。
 島をどう見るかによって、その視点は変わる。海によって生活の場が遮られているととるか、他の生活の場とつながっているととるか、あるいは島を内側から見るか、外側から見るか、という違いにもつながる。このような研究者の持つ視点の違いによって、資源の考え方も異なり、よりグローバルな議論が展開された(第7、11、12章)。
 現代社会においては、島という自然環境を資源化した観光産業や、人間を資源として見る移民の問題など、きわめて現代的な資源の問題も存在する(第10、13、14章)。
 このように、島は物理的には限られた空間であるが、そこに居住する人々にとっては閉じられた空間ではない。資源が貧弱な島であるほど、海を通じて外界と結ばれることも多かった。また、利用できる資源を活用するために費やしたエネルギーも尋常ではなかった。本書によって、人間集団による資源利用の特徴を少しでも理解することができたとしたら、それは島嶼環境が提供する複雑な舞台装置のおかげである。
 なお、地名や名称の記載法はできるだけ統一を図ったが、論文集という性格上、各著者の意向を尊重したため、章によって記載法が異なる場合もあることをお断りしておく(ただし「ハワイイ」の場合は、より一般的な「ハワイ」に統一した)。

印東 道子

目次

第1部 生態人類学的視点(トロカス・コネクション―西部太平洋におけるサンゴ礁資源管理の生態史;サンゴ礁の人と魚―オセアニアの海産資源とその利用;環礁生態系における植物利用システムの再編成―サンゴ島の生業経済と換金作物栽培;生業活動と象徴行為の交わり―台湾タオの漁撈活動;変わる“生計活動”と変わらぬ“資源利用”―東南アジアの“漂海民”の場合)
第2部 考古学的視点(島嶼世界の土器作り―資源の偏りと技術変化;狩猟採集民の島環境適応への挑戦―先史沖縄諸島の生業;大貝塚を作った人々―ルソン島ラロ貝塚群;遺跡から見た海洋資源の利用―ポーンペイ島ナン・マドール遺跡の場合)
第3部 文化人類学的視点(越境する人の動き―人的資源の活用;島嶼間交易における集権化と分権化―サウェイ交易をめぐる論争;資源をめぐる視線―パラオの内と外 ほか)

著者等紹介

印東道子[イントウミチコ]
東京都生まれ。国立民族学博物館、総合研究大学院大学・教授。東京女子大学文理学部史学科助手を経てニュージーランド・オタゴ大学大学院人類学科修士・博士課程修了(Ph.D.)。北海道東海大学国際文化学部助教授・教授を経て2000年から国立民族学博物館、2001年から総合研究大学院大学において現職。専攻はオセアニア考古学、民族学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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